第9回『子連れで田植え 日本に生まれてよかった』(6/11掲載 京都新聞)

 会の農場の田植えに子どもを連れて参加した。子どもたちは、あぜ道の花を摘んだり、蝶を追いかけたり、自然を満喫している様子。アスファルトの道ではすぐに抱っこをせがむ子が、あぜ道だとどこまでも走り続けるのは、なぜだろう。
 まず、小分けにした苗を田んぼに投げいれる。子どもたちも楽しそうにお手伝い。どんな投げ方をしても、起き上がりこぼしのように立つ。根の重みがあるので当たり前だが、起き上がる姿が新鮮で、健気な感じがしてかわいらしい。
 田に足を踏み入れると、なつかしい感覚。私の田舎では小学校五年生のとき学校近くの田んぼで米作りをした。キャーキャー言っていた記憶しかないけど、足は覚えていたようだ。
 子どもたちの泥田遊びスペースを確保し、大人は一列に並んで田植え開始。「せーの」の掛け声で進む。子どもたちからは、「むにゅむにゅやー」「わー、足がぬけないーー」いろんな歓声が上がっている。強い陽ざしに水温は上がり、足首のあたりはあたたかいが、足底は冷たい。みんな、だんだん無口になっていく。かえるやゲンゴロウのような虫が道案内をしてくれる。それにしても気持ちよさそうに泳いでいる。
 苗を踏まないように進む。この頼りない苗が生長し、秋には田が黄金色の穂に包まれる。そして、おいしいご飯が食べられる。日本に生まれてよかった。