農山村は受難の時代である。都市が華美に繁栄するとき、農山村はさびれ、超高齢社会となってしまった。食糧難の時代のことが忘れられて、世がお金中心に動くようになった頃からである。今や農業に従事する人たちの年令は平均でも六十才代の半ば、年令ピークは七十五才に近い。あと何年畑仕事をしてもらえるのだろうか。
私たちは有機農産物の共同購入を始めて、三十余年の時を重ねてきた。食卓の安全と同時に、農の安定も願っていたのだ。その動きの中で、農民と消費者の心で結ばれる関係が安心を育てると信じてきた。
今年はイチゴが大不作であった。楽しみに待っていた会員にとっては、がっかりであったが、がっかりでは済まない。年老いた生産者の皆さんの苦労と辛さに思いを寄せるからだ。
大不作の原因は獣害である。アライグマに襲われたからである。サルや鳥やタヌキ、そしてイノシシ、シカなどなども大変なのだ。獣害は環境問題である。野生の動物たちも食べ物を求めて里に下りてくる。その原因は複雑だが、経済的利益を求めた杉や桧の無計画植林が彼らの餌を奪ったことにも一因がある。
地上には多くの生物が共に生きて、安定した環境を作り出している。農民と都市民が協力し合って食糧事情も安定するのである。心をのせて、今日も安心野菜が届けられる幸せに感謝である。
農山村の受難の先には食糧自給力の暴落があり、消費者受難の飢えが待っている。生産と消費との分断をどうこえればよいのか。大事な課題だと思う。