第16回『トマトまつり B級品と地域通貨で巡る幸せ』(7/30掲載 京都新聞)

 トマトまつりに行って来ました。大量の完熟トマトを投げ合い、街中トマトでぐちゃぐちゃになるスペインのお祭りではありません。会の野菜や卵などの生産者がいらっしゃる南丹市園部町で、毎年トマトの収穫期(七月中旬)に行なわれる、恒例の味わい深いお祭りです。
 竹を切り出して即席で作られる手動式流しそうめん。決して投げたりしない、食べられるだけをいただくトマト狩り。ホテルなどありませんから宿泊は生産者のお宅に分宿。虫好き少年や、都会のコンクリートジャングルで揉まれる大人たちが、一年に一度この日の来るのを心待ちにしている、大切な行事なのです。
 今年はトマトのB級品(きずや痛みで流通に乗せられないもの)を会の地域通貨ポコ券(単位をポコで表しています)で会員が購入。得られたポコ券で会の取扱商品を入手。それを持って地元の独居老人のお宅へ御挨拶。参加した子どもたちをたくさん連れての訪問は、どのお宅にも喜ばれたようです。
 こうして地元の方にこの会の活動に関心を持っていただくこと、B級品であっても簡単に捨てない道を探ること、お金に頼らない暮らしへのひとつの提案、地域通貨を流通させること。これらが面白い形で結びつきました。
 一息ついて田園風景を眺めていると、白い鳥が向こうの空から気持ちよさそうに飛んで来ました。夢のかなう場所は虹の彼方ではなく、こちら側にあるのかもしれません。