■ツアー報告 水上アートバス「ダンスパフォーマンス!」(1)

去る6月17日(土)、隅田川を運行する水上バスでコンテンポラリーダンスをする水上アートバス「ダンスパフォーマンス!」の制作に学生スタッフとして協力した。
 ダンサーは様々な賞を受賞する白井剛氏。水上バスは貸切ではなく誰でもいつも通りに乗ることができる定期観光船だった。つまり、乗船客のダンスへの興味の有無は関係ないためどんな反応が起こるかもわからない。拒否されるかもしれないし、逆に歓迎されるかもしれない。少しスリリングだが、市民に偶然アートが配信される斬新な取り組みなのである。
当日は前日までの大雨が嘘のように晴れ渡った。そのため乗船場は多くの観光客で混み合っていた。今回ダンスをするのは15時10分浅草発日の出桟橋着と、16時30分日の出桟橋発浅草着の2本。まずは行きの15時10分発の準備をする。ここでは、乗船を待つ人々にダンスがあるということを知らせるためにチラシを配った。乗り込む段になると、船内二階後部デッキに本来設置されているゴミ箱とマットを端によけるため私たちは始めに乗り込む。白井さんは、一階席にひとり座っている状態だ。そして、出航すると、白井さんは動き出す。その姿に、白井さんのすぐ後ろに座る中年女性たちも驚きながらも楽しそうである。
彼は銀色の風船を操りながら2階へそろそろと動く。乗船客たちは目で追うもの、追いかけるもの様々だが、みな興味深そうな顔でみている。

彼は銀色の風船を操りながら2階へそろそろと動く。乗船客たちは目で追うもの、追いかけるもの様々だが、みな興味深そうな顔でみている。
2階の広くなっている後部デッキスペースで彼は片方の靴に風船の紐を結びつけ、風船に映る自分を真似たり、逆立ちしたりと様々な動きをする。しばらくしてから、そこから進行方向に前進する形で移動して、面白いと思われる動き(アーティストは真剣なのでこのような書き方をした)をして、ガイドさん(日の出桟橋発はテープ)を笑わせる一幕もあった。

このパフォーマンスは浜離宮に着くまで約20分行われた。
乗船客に感想を聞いてみると、NYからの夫婦(ダンサー)は、「Enjoy. I ‘ve never been to experience like a space.」とのコメントや、今回で2度目の水上アートバス体験となる50代男性は「やはり面白い」と笑顔を見せてくれた。
今回携わったことで、やはりアートは人々の身近に合ってなんぼではないかと体感した。確かに美術館もいい。しかし、遠くなりがちなもの、特にダンスなんてお金がなければ行けないし、会場も近くでなければよほどのファンでない限り行かないだろう。しかしそれが、水上バスという意外な場所で、760円の乗船料のみで見ることができる。これはかなりのチャンスであろう。私は体育の授業でダンスが一番嫌だったが、このようにダンスにふれることができれば変わるはずだ。乗船したこどもの、「私もあれやりたい!!」と降りがけに言っていた一言が忘れられない。コミュニティーアートには、確かに人に転機を与えるパワーがあると実感した。同時にこんな企画をぜひ私の住むつくばでもやってみたいと感じた。
乗船客数は浅草発(337名 )・日の出桟橋発(364名)だった。