プログラム駆動症候群ー心をもてない若者たちー その3

三森創著 新曜社

*動機のあるいじめ

1.刺激—反応結合に動機づけられたいじめ
このタイプはいじめの対象者が刺激となり
それへの反応として加害者にいじめ行動が起こります
いじめられる者が
どうしていじめ行動の刺激になったのかが問題です
このため加害者の成育歴 家庭環境 過去の対人関係に
注目することは意味があります
だいたい加害者の抑圧された自己像 
嫌悪する人物像が浮かび上がります
専門的には刺激—反応結合の強化随伴性を
調べることになります
このタイプへの対応として加害者への叱責や罰は
その場で即座に与えないと効果がありません
近接性 即時性が重要です
手続きを踏んだり周囲の合意を得たりしてからでは
遅いし効きません

2.認知に動機づけられたいじめ
このタイプは加害者はいじめの対象者を
『あの子はいじめられてしかるべきだ』と認知しています
つまりいじめの理由と判断をもっています
例えばいじめの対象者が忘れ物をして
自分たちの班全体の評価が落ちてしまったというような
事実からその子に対する無視・忌避・攻撃等の行動を起こします
このケースでは加害者に質問したり話し合いを持ったりすることは
意味があります『なぜいじめるのか』と・・・・・・

3.関係に動機づけられたいじめ
このタイプはいじめの首謀者よりも同調者・傍観者に当てはまります
『いじめないと自分がいじめられる』というケースです
背後には集団の関係性があります
また いじめの対象者の方もこの集団内では
『いじめられる役割』(パシリ 道化 負け役など)を
演じますのでいじめなのか仲間づきあいなのか
見分けにくいところがあります
対策としてメンバーを集めた説得は効果がありません
集団の関係性そのものを失効しなければダメです
集団の活動を制限するか 集団自体を切り崩すか あるいは
いじめの対象者を集団から物理的に引き離すか(学区外への転校)などです

*動機のないいじめ

プログラムドリブンのいじめに動機はありません
プログラムドリブンのいじめは気まぐれであり
上の1のように対象者がいれば(刺激があれば)起こるという
条件反応ではありません
加害者の心理的抑圧やコンプレックスが過去に存在しても
現在においてはほとんど解消しています(心の無組織化により)

また上の2のように
しかるべき認知と判断から起こるというものでもありません
加害者は自らの認知に基づいて積極的に行動するというよりは
時間つぶし・暇つぶしのような消極的行動として
いじめを起こします
加害者にいじめの動機と理由をたずねても
加害者のもっともらしい返答には妥当性がないと考えるべきです
どこかで聞いたセリフを即座に返されるだけです
マンガやドラマをあまり見ない大人は
グッとつまるか コロッとだまされてしまいます

さらに上の3のように
集団の関係性に動機づけられて起こるものでもありません
いじめ集団の形成は薄弱でありその場その場で一時的です
時にはひとつのクラス全体がいじめに関与するケースもあります
核となる集団を線引きしようにも境界がはっきりしません
誰のせいでもないというような状態で行き詰ってしまいます

〜中略〜

尚 現状では青少年の不可解な行動は
ほとんどプログラムドリブンであると思っていいくらいです
いじめ 小動物虐待 おやじ狩り 器物破損などの問題行動は
最初に『動機あり』と仮定して解釈するよりも
『動機なし』と仮定して解釈するほうが絶対に早いです

<ムラサキシキブの実が色づいてきました>