アフガニスタン・命の水を求めてーある日本人医師の苦闘

中村哲 NHK出版より

今、周囲を見渡せば不安を忘れさせる享楽の手段や
大小の『権威ある声』に事欠かない
このことは洋の東西変わらない
一見勇ましい『戦争も辞さず』という国際社会の
暴力化もその1つである

石油の利権を求めて和を損ない
『非民主的で遅れた破綻国家』に目を吊り上げ
『経済不況』を回復すれば幸せが訪れると
信じるのは愚かである

人の幸せは別の次元にある
人間にとって本当に必要なものはそう多くはない
少なくとも私は『金さえあれば幸せになる』という迷信
『武力さえあれば身が守られる』という妄信からは自由である
何が真実で何が不要なのか
何が人として最低限共有できるものなのか
目を凝らして見つめ
健全な感性と自然との関係を回復することである

戦後60年自分はその時代の精神的気流の中で生きてきた
しかし変わらぬものは変わらない
江戸時代も縄文の昔もそうであったろう
いたずらに時流に流されて大切なものを見失い
進歩という名の呪文に束縛され
生命を粗末にしてはならない

今大人たちが唱える『改革』や『進歩』の実態は
宙に縄をかけてそれをよじ登ろうとする魔術師に似ている
だまされてはいけない
『王様は裸だ』と叫んだ者は見栄や先入観
利害関係から自由な子どもであった
それを次世代に期待する
これが22年間の現地活動を通して得た
平凡な結論とメッセージである

<ススキの穂を見ると秋だなあと思いますね>