社会学入門—人間と社会の未来

見田宗介著 岩波新書より

「社会」という語は伝統的な日本語の内にはなかった
society(英) Gesellschaft(独) societe(仏)などの
翻訳語として明治期に創出された
1887(明治10)年頃に福地源一郎、西周などの
表記を通して次第に定着したとみられる

伝統的な日本語の中で「社会」の語に一番近く
一般的であったのは「世間」であった
「世間の荒波」=「社会の荒波」というように
今日でもしばしば「社会」の同義語として用いられる

この「世間」とは柳田国男らの民俗学があきらかにしているように
元来、共同体の外部を指す語であった
(「世間噺」「世間通」とはムラ共同体の外部世界の話であり
外部の事情に通じた者である)

共同体にとって外部の集列性の世界を指す語であるゆえに
それは「荒波」「冷たい風」などの表象と結合しやすかった
日本人の「社会」のイメージは「社会に出る」という言い方のように
このような「外部」としての「世間」のイメージと重なっている

ヨーロッパ各国の言語における
society、 Gesellschaft、 societeなどは
すべて「仲間」「共同」原義に由来し
社交界、協会、会社という語義をもつように
元来「内部」(仲間内)を指す語であった

・・・・外部と内部・・・・まったく違う意味なんですね?・・・・・

<桃の花も冬空に鮮やかですね>