幸せは衣食住か—15才の問いに答える— 大石芳野より

人間にとって衣食住は欠かせないばかりか
各民族の伝統でもあるし、文化の誇りでもある。
それを戦争は奪ってしまう。安住から放り出され
恐怖に追い込まれ、命をも脅かされる。

平和を壊され、人間関係の安心感や
信頼感までも失う戦争は一体だれのせいなのか。
一部の為政者によってなのだが、それを支えたのはだれか。
国民の多くではないのか。人々は流され、目をそらされ、
瞬く間に平和にひびが入る。
その果てに子どもたちの運命が弄ばれ、衣食住も揺さぶられる。

みんなが経済的に豊かだったら戦争や紛争は起こらないと
言われるだけに、貧困が紛争を招く面は強い。
けれど衣食住さえ十分に揃えば満足ができて平穏かと言えば
そう単純ではないだろう。
人間の業や欲を拭い取ることはなかなかできにくいからである。

人間は実に欲張りである。
そうではなかった時代や地域、民族も
歴史のなかにはあったようだが、
競争社会になって独り占めに快感を覚えるようになった。
ますます凄まじい欲に覆われ、
世界を独占せずにはいられない国々の勢力に引きずられ、
現代は大いなる混乱の時代となってしまった。

そうした世界や国内の状況のなかに私たちは生きている。
それだけに私たちは命の尊さを噛み締め、
思いやりの心を育みあう関係を持ち、
弱いものをいたわる気持ちを大切にしてほしいと思う。

個人を取り巻く社会は全体と否応なく繋がっている。
決して一人ではないだけに、お互いの違いを認めあうしかない。
自分のたった一度の人生を地に足をつけて歩むことが、
結局いちばん満たされた幸せだということになるのではないだろうか。

<ハナダイコンが一面に咲いています>