幸福のレシピ 藤井あけみより

見えない涙 「おりこう」の裏を考えて

真美ちゃんは生後6ヶ月の女の子
病気で入院してもうすぐ1ヶ月
手術も無事に終わり後は退院を待つばかり

真美ちゃんはおとなしくてひとり遊びも上手
保育士さんも「真美ちゃんはおりこうさんなので」と
安心しています

けれど私はかえって不安でした
入院中でお母さんとあまり会えないのに
「おりこうな赤ちゃん」というところが
妙に引っかかっていました

ある朝病室に行くと真美ちゃんは静かに遊んでいました
けれどもひとこと私が声をかけると
とたんにぱっと目が輝き「あ〜う〜」と
お話が始まりました
しばらくしてベッドに寝かせようとしたら
大きな泣き声がしました

私はほっとしました
なぜかといいますとそれは真美ちゃんの心の健康が
確認できたからです
親しくした人との別れを悲しむことができる
正常な心の発達がうれしかったのです
真美ちゃんの心の中に自分や他人に対する
「基本的信頼感」が築かれつつあるのだと思いました

お母さんのいない時赤ちゃんは見えない涙を流しています
おとなしく問題がないように見える赤ちゃんも
心の中では涙を流しています
この涙に大人はもっと気づかなければいけないと思います

私は心の中で言いました
「真美ちゃん お母さんにたくさん甘えて
お母さんがこまってしまうくらい
手のかかる赤ちゃんになってね」と

<シモツケが次々と咲いています>