ネットで連帯 韓国の中高生巨大デモ「私たちが主人公」

<東京新聞6月18日>

韓国の反政府デモは先月2日、
ソウルでの2万人集会から続いている。
1978年の民主化闘争の記念日である今月10日には、
ソウル中心部での集会に主催者発表で約70万人が参加した。

きっかけは李明博政権が発表した
米国産牛肉の輸入制限撤廃への反対だった。
経済再生に市場原理主義導入を揚げる同政権は、
米韓自由貿易協定(FTA)の批准を急ぐが、
その「手土産」がこの輸入制限撤廃だった。

本誌ソウル支局の築山英司記者は
「とにかくデモの参加者に中高生たちが多い。
それに家族連れも加わっている。
10日のデモは事前には死者も予想されていたが、
非暴力で統制も取れていて驚かされた」と話す。

この驚きは地元の韓国人にも共通のようだ。
21年前の民主化闘争時代に学生で、現在は風刺漫画家でもある
祥明大学マンガ・アニメーション学部の高慶日学部長は
「私たちは顔を隠し、武装した世代。いまの子たちは明るい。
最初は中高生が6割。先日の集会でも女子中学生3人が演壇で
『話すのは苦手なので』と言って踊った。いや、驚いた」と語る。

21年前と比べての違いはインターネットにもあるという。
現場からの動画も含め、若者は新聞よりこれで集まる。
今回の問題も政治的に論じられたのは後のことで
「最初は身近な交流サイトで取り上げられた。
給食の話題で牛肉を食べさせられる軍の若者や中高生が
その一点で反応した」(高氏)という。

もっと大きな違いは「自分が主権者だという自覚」(同)という。
「私たちの世代にとって、権力は巨大な壁だった。
でも、彼らは『この国のすべての権力は国民にある』という
憲法1条をデモで歌っている。
自分たちが主人公なのだから、暴力には訴える必要がないと考えている」
(中略)

一方、同じ市場原理主義政策が貧困、格差社会を生み出した日本では、
非正規雇用問題などでデモがあるとはいえ、ここまでの広がりはない。
社会運動に詳しい明治大学の中村勝己講師(政治学)は
「韓国には80年代の民主化運動の歴史的な継承、
若者の運動を受け止める大人たちの存在と言う世代の継承がある。
日本にはそれはなく、逆に70年代以降、
学生運動の中心だった新左翼党派が陰惨な内ゲバを繰り広げた。
その後遺症は重い」と指摘する。
「同じ市場原理主義への異議申し立てでも、日本は無差別殺人の形で現れる。
日本の管理システムの強さも一因だが両社会の溝はあまりに深い」

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