本音のコラム 希望格差社会の現実

山口二郎より

社会学者の山田昌弘氏が
希望格差社会という本を出したのは4年前のことである。
この本を最初に読んだときには、
ネーミングのうまさに感心したが、
事態はそんな悠長な感想を述べる段階ではなくなった。

希望格差を放置すると、どんな社会が出現するのか、
最近の若者による無差別殺人事件が教えている。
犯罪を正当化するつもりは毛頭ないが、
自分には希望があるからと希望を失った他人を放置すれば、
自分にも累が及ぶかもしれない。
本当の社会秩序は、みんなが希望を持つことによって確立される。

23日のNHKニュースは、
約10パーセントの高校生が授業料免除を受けており、
首都圏の高校では新入生の半分が学費を払えないために
退学するところもあると報じていた。
この事実は、二つの意味で衝撃的である。
中等、高等教育は自己実現のために不可欠の前提である。
高校中退では低賃金の仕事にしかつけない。
また、学校こそ若者が人間関係を築く最良の場である。
学校を離れることは、孤立への道を踏み出すことを意味する。

貧困と孤立を放置してはならない。
どこの党でもいいから、経済的理由で学校を辞めたり、
進学をあきらめたりする若者をゼロにするという公約を打ち出し、
実行してほしい。
その程度の予算さえ出せないほど、この国の政治は貧困なのだろうか。

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