中島岳志の眼
「小さな政府」は「小さな権力」にならない
「小さな政府」路線は本当に権力の縮小をもたらすのか?
答えはNOである
「小さな政府」はこれまで官が担ってきた多くの事業を
民間に委託する一方で
許認可や予算、計画等の権限は保有し続ける
すると事業の現場で発生した問題の責任は
民間企業がとることになり
官僚は「権限を持ちながら責任を取らなくてもいい権力」を
手に入れることになる
ここで起きている事態は
「責任のアウトソーシング」と言う事態である
様々な決定権を持ちながら
責任を取らなくてもいい行政のあり方は
必然的にグロテスクな権力を生み出す
2005年に大騒ぎになった耐震偽装問題を思い出して欲しい
この事件の最大の責任は周知の通り構造計画書を偽装した
姉歯秀次(元一級建築士)にある
しかし問題の核心は一個人の偽造をチェックできなかった
建築確認システムの不備にこそある
国土交通省は1998年の建築基準法改正の際に
建築業務の民間委託を決定し
さらに限界耐力法を導入することで
従来機能していたシステムを崩壊させた
国交省の担当者は事件で責任を問われることはなく
代わりに建設業者、民間確認検査機関 デベロッパーらが
過剰な責任を押し付けられる形で逮捕された
官僚批判の熱狂によって逆説的に
権力のグロテスクな肥大化が進むと言う事態に
われわれはそろそろ気づかなければならない
<クズの根は葛根湯などの漢方薬として使われます>