青木信人(法務省保護局精神保健観察企画官)より
自分のコンプレックスを補うために強さにあこがれる時期がある
男子の場合その一つの典型は腕力への憧憬だろう
とりわけ学校教育から脱落した少年たちの間でその志向性は強い
勉強ができなくても喧嘩が強ければ
インフォーマルな集団の中でそれなりの位置をキープできる
しかし弱さを隠すための虚勢としての強さでは
人との豊かな関係を築くことはできない
人との関係を壊す結果を招くことが多い
自分に自信がないから相手を必要以上におとしめることで
失われた自信を回復しようとする
「NO!」と言う勇気がないから安易に同調して
攻撃行動に加わってしまう
弱いからこそ人は人を傷つける
だから心から反省するには何よりもまず自らの内面に潜んでいる
そうした弱さを自覚する必要がある
このことは集団暴力事件にのみ言えることではないだろう
学校や職場で日常的に見られるいじめ問題にも通低する
安易に人を傷つける同調行為に加担しないためには
一人一人が自分の内面に隠し持っている弱さを
克服することが不可欠なのだと思う
人が人に優しくあるためにはある種の強さが必要なのだと思う
そうした強さを持つためには人は一人の個人として
集団の中で自立しなければならない
自立した上で他者と共存する道を模索しなければならない
そうした一人一人の試みがひいては集団の質を
変えていく契機にもなるだろう
<ウインターコスモスの小さな花が咲きました>