脳を生かして未来を開く 茂木健一郎氏

僕たち人間には、未来を見通すことは残念ながら不可能です。
この世界には必ず不確実な部分があり、
それが確実なものと混在している(「偶有性」)からです。
その中で生きていくために大切なのは、
何が起こるかわからないという不確実性を、不安に感じるのではなく、
楽しいと捉えることができるかどうかだと思います。

人間の脳は、本来物事を楽観的に考えるようにできています。
そしてまた、楽観的でないと脳の回路がうまく働かないことも
わかっているのです。
不安や恐ればかりを感じて悲観的になると、
脳の働きもダウンして、いわゆる「うつ」の状態になってしまうのです。
ですから、脳科学の立場から見た、人生をうまく生きていくためのコツは、
未来に対して楽観的であれということになります。
言い換えると「根拠のない自信を持て」ということ(笑い)。

ではどうすれば根拠のない自信が持てるのか。
子どもの発達を考える上で重要な概念に、
「安全基地」というものがあります。
子どもが未知の外界を探検しながら学んでいくにあたって、
たとえば母親の膝の上にいる、常に保護者とアイコンタクトがとれるといった、
自分が守られていることを実感できる「場所」や状況を持っていることが
大切だというのです。
安全が確認できる分、冒険もできるわけです。

大人の場合、この「安全地帯」は、無論母親の膝ではなく、
自分の中の揺るぎないもの、
よって立つ原理・原則のようなものといってよいでしょう。
そんなものはない、と言う人も、
内面を掘ってみると必ず見つかり、そして掘れば掘るほど
大きくどっしりした姿を現すはずです。
「掘る」とは、自分の過去を振り返る作業、
自分がどんな人と接してどんな言葉をもらい、
どんな本や映画に感動したかを思い出してみることを言います。
そうすることで自分の過去は育てられる、
つまりそこから、より大きな学びを引き出すことができるのです。

<ウメバチソウがきれいです>