子どもたちは変わったのか?

『思春期の心の臨床』 青木省三著 金剛出版 より

最近の子どもの一般的な傾向として、また不登校の場合でも、
「最近の子どもは弱い、キレル、自己中心的」などとよく言われる。
たとえば、本当に最近の子どもは弱く、
我慢することができなくなったのだろうか?
理不尽なことに対する我慢というような意味では弱くなったと
言えるかもしれないが、それは嫌なことは嫌と言える、
振舞えるようになったと考えることもできるのではないだろうか。

たとえば、キレルという言葉は、急速に抑制が破綻するというように
否定的に捉えられやすいが、
ようやくキレルことができるようになったというように考えた方がいい場合や、
過度な負荷に対する安全弁と考えた方がいい場合も少なくないように思う。
現代の子どもたちに必要なのは、
再び、自己抑制を強めることによりキレルことを防ぐのではなく、
いかに安全に、ゆっくりと抑制を解くすべを身につけるか、
ということかもしれない。

そして、自己中心的というのは、
人に合わせて生きるという集団志向型の生き方から、
初めて、自分の考えや感覚を大切にできるようになり、
本当の意味での自律、自立、個人主義が根付き始めているとも
考えられるように思う。

子どもは、時代や文化が変わっても変わらない部分がある。
一方で、子どもは、時代や親のあり方を映し出し、変化しているところがある。
しかし、変化はあくまでも変化でありニュートラルなもの、
換言すれば、プラスとマイナスが表裏一体となったものである。
その変化を、「今の子どもたちは・・・」とマイナスの方からだけ捉え、
欠点をあげつらうような大人の言動に対しては、大きな疑問を感じている。

変化のマイナスをきちんと見ることも重要であるが、
そのプラスに光を当てることが、
新しい時代の新しいおとなとなる子どものよさを
引き出すことになるのではないか。

<エリカは美しい鉢花です>