思春期を乗り切る親向けセミナー「第二反抗期の子どもとの関わり方」

講師 植田宏樹先生(精神科医・秋川病院副院長)
10月25日 立川市柴崎会館
参加者 13名

植田先生は長い間、主に認知症の問題に取り組み、
また10年前からは小中学校の精神科医として、
発達障害の子どもと接してこられました。
認知症にしても発達傷害にしても、家族対応が大事であること、
周りの人が、病気やその人の特徴(できる部分とできない部分)を
理解すれば、薬などを使わなくてもスムーズにいくことが多いそうです。
そこで今回は、第2反抗期の子どもの特徴を理解することをテーマに
2時間にわたってお話されました。

<第二反抗期の子どもの特徴>
学童期までの子どもは、見たまま聞いたままで反応し、
親のマネジメントのもとで行動するため、大きな問題が起きる事は少ない。
しかし、12歳〜14歳の思春期に入ると、抽象的思考能力が発達し、
愛や正義といった目に見えないものがわかるようになるため、
親や教師、社会に向けてことあるごとに自己主張するようになる。
身体の急激な変化(初潮や精通)が起きるのもその頃である。
親に干渉されずに自分の力でいきたいと思うようになり、
親に対して秘密を持てるようになったり、
一人で時間を過ごせるようになる。

このように第二反抗期は、自分でマネジメントする力を身につけ
真の自己を確立していくために重要なステップであるが、
一方、子どもにとって不安や混乱の時期である。
親のマネジメントから離れ、自分でマネジメントしなければならなくなるが、
そのために必要な「段取り」「計画性」「将来を推測する力」は、
25歳頃になってようやく身につく力なのである。
思春期の脳は、これらの力に関わる前頭前野が未成熟で、
また大脳皮質に一生に一度の大変革が起きる時期でもあるので
ちょっとしたことにイライラして混乱しやすくなる。
親にとっては未成熟で不安定な子どもとしか思えないので
ついつい管理しようとするが、ことごとく衝突する結果となる。
親は、子どもの前頭前野の成熟を理解し見守り、
自分で考え自分の力で行動させる事が大切である。

<第二反抗期の子どもとの関わり方>
・子どものオフライン状態とオンライン状態を見分けること
オフライン状態の時に何を言っても効果は薄い。
オンライン状態の時、子どもから聞かれた時に答えると
理解してもらえることが多い。

・時々子どもへの対応の仕方を変えて子どもをオッとさせること
子どものウゼェという反応は、対応がパターン化しているということ。
やり方を変えてオッとさせると、子どもはなぜそうなるのか考えるので、
オンライン状態になることが多い。
行き詰ったらやり方をちょっと変えてみるのが一つの方法。

・自分自身のストレスをためないこと
1人で背負い込まない。悩みをシェアできる人や場所を確保する。
育児に没頭せず、余暇活動や仕事など他に没頭できるものを複数つくり、
嫌なことを忘れられるテクニックを身につける。
1人で頑張りすぎず、支援を積極的に受けることが大切。

他にも、思春期の子どもがよく居眠りするのは、
情報整理のために脳を休ませなければいけないからで生理的なものであることなど、
思春期の脳のはたらきと反抗期についてわかりやすく説明していただきました。

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<参加者アンケートより>
・話がとてもわかりやすく、ずっとうなずきっぱなしでした。
話をきいていて安心できました。気をつけていく点、
対応のコツなどがよくわかり、ためになりました。

・お話がとてもおもしろく、不安な気持ちがとりのぞかれたような気がします。
子どものことだけでなく、自分たちの不安をどうするかという話もとてもよかったです。

・脳の成長に合わせた子どもの心の成長はとてもわかりやすく思いました。
思春期は成長期にともなう一時的なもので、
過ぎればまた親子が分かり合えると思うのですが、
親が過干渉になり一時的なものではなく親拒否となってしまう事が
もっとも問題だと感じました。

・有意義なお話をしていただきました。
生物学的な変化、それに伴う心の変化、大変よくわかりました。
何人かの精神科医に接触しましたが、疑問符のつく医師が多く、
不信の念しかなかったですが、植田先生のお話をきけてよかったです。
いい先生にお目にかかれました。

・心理的なカウンセリングを勉強していますので、
今日の生物学的なお話はすごく理にかなっている気がして、
特徴として考える事ができたのがよかったと思います。
義父は認知症という事もあり、
現在ヘルパーの取得の講座もいっていることからも、すごく参考になりました。

・身体の方から心を知るというのはとても面白いものだなあと感心しました。
むずかしいこともたのしく吸収しました。
さて、これを生活に生かすにはというところです。

・ソフトな語り口の植田先生のお話を伺って、とても参考になりました。

・思春期の脳の成長のお話は初めて詳しくお聞きしたのでとても勉強になりました。

・自分でマネジメントしている時期、トライandエラーをさせる時期の思春期。
とても勉強になりました。