自然との関係 見つめ直す時 里山に触れてみよう

鷲谷いずみ より

里山の定義は人によって異なる
私は『農地や集落とともにあって生産や生活に
必要なものをとってくる場所』と考えている
資源採集の場だ
里山と農地がきちんと管理されパッチワーク状に
配置されたところを里山ランドスケープと呼んでいる

里山は大きく二つの点で意義がある
一つは文化的なもの、もう一つは土地利用における意義だ
自然と人間のかかわりの最古のものは『採集』という行為だろう
果実を取るとか菜っ葉を食べる、貝を拾う、死んだ動物の肉を食べる
採集は『農業』というシステムができた今日でも続いている

里山には地球上の生き物が数十億年かけて蓄積してきた
生きるための戦略や人類の知恵が残っている
精神的な効果も得られる
文化的に意義のあるすばらしいシステムだ
また農地と水資源の配置のように里山からは今日の世界が抱えている
地球環境の危機を乗り越えるための様々な示唆が得られる

古い時代から続く農地は自然の地形や植生に
強く規定された配置になっているはずだ
江戸時代に開発された新田なら落ち葉や薪を拾う場所や農地などが
そこにデザインされている

一方で近代の農地はモノカルチャーが広がっている
そういうところは生き物も少ないし農産物以外の自然の恵みは失われてしまう
里山のようにモノカルチャーでなく異質性を持つ土地利用に注目することが
危機を乗り越えるのに重要だ
私たちは今何ができるだろう

まだ自然が残っているところは保全しながら持続可能な形で利用していくとよい
すでに里山が失われたところは残念ながら生物相まで取り戻すのは難しい
そういう場合でも生き物を調べて見るとか、昔から残っているものを探すとか
できることはいろいろある

都市の中にも注意深く目を向ければ生き物はそれなりにいる
生き物の観察をぜひ楽しんで頂きたい
生物多様性への関心にもつながる
そしてぜひ里山に足を運んで欲しい
科学的な証拠はないが自然と触れあうことは心の発達にきっと必要だ

・・・・・・今はさびしい冬景色ですがもうすぐ春ですね
この里山が緑に包まれる頃が楽しみです・・・・・・