THE BIG ISSUE JAPAN 151号より

年を重ねるということ 雨宮処凛

最近、小学生高学年から中学生くらいの女の子向けの
ファッション雑誌を読んでいて(仕事がらみで読む必要があり)
非常に驚いた
そこには何か『年を重ねる』ことに対する強迫観念的な
恐怖が垣間見えたからだ

たとえば今、日焼け止め対策をバッチリしておかないと
30代になった時にはお婆ちゃんみたいな肌になるとか
どうみても中学生にしか見えないモデルの女の子が
毎日美顔ローラーを使っていることをさらりと語ったりだとか

もちろん、小さい時から美容に気を使うことは別にいいと思う
ただ、その背景に垣間見えるのは
『若くて美しいことだけが最大の魅力』といった価値観だ
この価値観は日本津々浦々まで浸透して中高生からでさえ
『年をとるのが怖い』といった言葉を聞く事は少なくない
彼女たちにとって、年齢を重ねることは『失う』と同義語なのだろう

私自身が中高生の頃もそんなことを言う友人は多かった
しかし私は賛同できないでいた
逆に10代、20代の頃には『早く30代になりたい』と思っていた
何の根拠もなく『30代になれば生きづらさはなくなるのではないか』と
思っていたからだ

残念ながら完全になくなった訳ではないが、35歳の今は
10代、20代と比べて格段に生きやすくなった
それは自分の精神状態がそこそこ安定してきたり
「生きづらさ」歴が長いといろいろ対策できるようになってきた
ということもあるのだが、外的な要因も大きな影響を与えていたのだ
と今になってつくづく思う

例えば、すごく大雑把に言うと「若い女」ってだけで生きづらいことは多い
プライベートでも仕事でも「若い女」ってだけで馬鹿にされたり
逆に過剰にちやほやされたりする
で、どんなにちやほやされても「それは今、私が若いからだけなのだ」
とわかっているので、もう自分が馬鹿にされてんだか
ちやほやされてんだか、自分には「若さ」という価値しかないのか
自己評価はジェットコースター並みに急上昇と急降下を繰り返し
何がなんだかわからないのだ

だからこそ、30代になった時には「やっとあの失礼な『若い女扱い』されなくて済む」
と心底ほっとした
私の周りでは『ハッピーサーティー』という、『惨めな20代からの卒業』を
意味する言葉が使われている
年をとることは『失う』だけでなく、実は生きやすくなることだと
本当はもっと多くの大人が言っていいと思うのだ

・・・・私は60代ですが、今が一番生きやすく自分らしく生きていると感じています。
若さははたから見ればまぶしいかもしれないけど本人には苦しい未熟な成長期です。
若い人には人生経験をつめばつむほど自分が強くしなやかに育つことを知って欲しいと思います・・・・・・・

<露草が咲いていました>