THE BIG ISSUE JAPAN 156号より

植物からの贈り物 満ち足りた衣食住 藤田雅矢

「植物からの贈り物」と聞いて
あなたは何を思い浮かべるだろう

美しい花—— たとえば一面に咲くコスモス畑
香り高いオールドローズ。満開のソメイヨシノ
それとも果物や野菜だろうか
蜜入りのリンゴや完熟の甘くとろけるマンゴー
ホウレンソウのサラダ
あるいは風になびく麦畑、たわわに実る稲穂・・・・

小麦からは焼きたての美味しそうなパン
そしてお米からは炊きたてのご飯
さらには食卓に並ぶ肉や魚も元をたどれば
草や穀物、植物プランクトンや藻を食べて成長したものだ
そして食後の珈琲やそこに入れる砂糖も
またビールやワインも食べ物はみな植物からの贈り物である

また着るものも植物由来の素材が多い
デニムのジーンズ、涼しげな麻のシャツ
シルクのスーツも蚕が食べているのは桑の葉だった
ウールのセーターも羊たちは牧草を食んでいる
そして心地よい眠りを誘う布団もまた綿からの贈り物だろう

さらには家の中を見回してみよう
フローリングの木材、い草の畳、家の柱、箪笥や木の机・・・
これもまた植物からできている
そして暖をとる薪や炭はもちろん、石炭も何億年か昔は植物だった
どこかの火力発電所ではいまごろ電気にまで変身しているかもしれない

そんなふうに考えていくと身の回りには植物の贈り物ばかり
植物あっての生活である
そして忘れてはいけない
空気中の酸素もまた植物がもたらす光合成の産物なのである

これらの満ち足りた衣食住
これがみんな贈り物なら何とありがたいことだろう
これからもずっと植物からの贈り物がもらえる人類でありたいものだと思う

<コスモス畑です>