発達的人間論 樹から下りたサルの運命 津留 宏著より

動くことと感じること

植物は与えられた生育条件にただ受身的に
適応しなければならないという点で、より運命的な存在であるが
動物は多少ともみずから動くことによって
好ましい状況へ移動しうるという点で
より積極的、自発的な生物になっている

みずから動くことを行動とよぶなら
心理学が行動の科学として定義される根拠がここにある
心理学は心の働きを科学的に研究する学問だが
その心の働きは実はみずから動くこと(行動)をとおしてのみ
外から認知できるのであり、この行動を背後で主体的にあやつるものとして
心の存在が考えられるからである

さて動物が行動を起こす 契機は二つある
一つは外界の刺激を感知しこれへの反応として起こす場合であり
もう一つはみずからの内部的な要求を満たすため自発的に起こす場合である

外からの刺激を感知するためには知覚機能が必要であり
内的な要求としては生の基本的要請としての衝動、
本能的欲求などが考えられる

これらは生命エネルギー転換の発動契機といってもよい
そこで行動をとおしての心の研究はどうしても
この二つの面から入っていかなければならない

生体は外からのいろいろな刺激を感受する
それを適切にとらえて中枢に伝えるものが感覚器官である
心はこれによって目覚めさせられるとすれば
感覚はまさに心的活動の窓なのである

<クモマ草はかわいい小さな花です>