格差と寿命 竹田茂夫より

昨年イギリス政界で話題になった本がある
日本語訳では「平等社会」というタイトルだが
イギリスの疫学の専門家が長年の研究をまとめたものである
主張は衝撃的だ

下積みの人間は社会生活でストレスを感じることが多いので
同じものを食べ、同じ生活をしていても
高所得層より病気になりがちで死亡率も高い
所得水準が高くても格差の大きい社会では平均寿命は短く
精神疾患も多い

経済成長で国民が豊かになっても不平等が広がれば
命と心身の健康という根幹が損なわれるというわけだ
データ処理には反論もあるが、この結論は世界各地の統計に基づいている
これが本当ならば分配や福祉よりも効率や成長が大事だという主張は疑わしくなる

『稼ぎ頭の企業や才覚ある人物にはどんどんやらせるべきだ
格差が広がっても経済全体が良くなるから結局は下層にも恩恵が及ぶ
先頭集団に存分に活躍してもらうために規制緩和や減税が必要だ」という
市場原理派の議論は根拠を失う

わが国でも格差論争があった
日本の格差はそれほどひどくない、格差があっても構わないなどという
議論はアピールしなかった

オール中流社会と思われていた日本で格差が急拡大している現実を
人々が皮膚感覚で感じ取っていたからだろう

<アマドコロはひっそりと山に咲きます>