人権のひろば 「誰も置き去りにしない社会へ」 清水康之より

戦後日本は世界屈指の経済大国になったと同時に
世界屈指の自殺大国にもなった
14年間連続「年間自殺者3万人超」

つまり1日80人以上が自殺で亡くなり人口10万人あたりの自殺率は
日本はアメリカの2倍、イギリスやイタリアの3倍と先進国の中で
群を抜いて高い

かつては自殺は「身勝手な死」と捉えられていた
自殺した人は「卑怯者」「命を粗末にしたもの」と非難されることが多かった
しかし現代日本社会における自殺の多くは「追い込まれた末の自殺」
であるといわれている

パワハラや過労、介護疲れや失業、いじめや借金といった様々な社会問題が
きっかけとなって複合的に問題を抱えこみ
「もう生きられない」「死ぬしかない」という状況の中で
自殺へと追い込まれていっているからだ

1人が自殺で亡くなると4〜5人が遺族になるため、毎年12〜15万人ずつ
自死遺族が増え続けている
推計では今自死遺族は全国に300万人
日本に暮らす実に40人に1人が家族を自殺で亡くしている計算になる

戦後日本が遂げた「奇跡の復興」は多くの命を置き去りにすることによって
実現したものだ。私たちはそろそろそのことを直視すべきである
社会は半永久的に続くものだが私たち1人ひとりの人生は決してそうではない

私もあなたも例外なくいずれ死を迎えるときがくる
それなのに社会の「復興」ばかり重点を置いて、一人ひとりの命や
大切な人を亡くした痛みからの回復を後回しにしてしまっていいのだろうか

そうやって「かけがえのないもの」をないがしろにしてきた結果
私たちの社会は自殺大国になってしまったのではないか

生きる環境を整えるという意味での「物質的な豊かさ」と
しかしそれを求める過程で決して犠牲にしてはならない「人間的な豊かさ」と
私たちは両者の狭間のバランスをとりながら
これからの社会を切り開いていく必要がある

<ムラサキツユクサが咲いていました>