センス・オブ・ワンダー 野依良治より

人間は自然の恵みを受け、厳しさと対峙しながら生きる
野生動物が強者と弱者、食物と毒物を見分けるように
自然探求は人間の本能

子どもは誰でも科学者、大人になっても
科学者でいられるかが問題だ
太古から太陽や月、星を眺めてきた
雨や雪に触れ、川、海を見つめ動植物に出会う

五感を生かして物事を知り、驚き、納得する
レイチェル・カーソンの言う「センス・オブ・ワンダー」
この自然の実感こそが80年を生きる糧となる

大戦末期の小学1年時に田舎に暮らした
衣料や燃料,食料はすべて自給自足
野菜づくり、田植え、麦踏み、芋ほり、栗拾い
マツタケ狩り、魚釣り、鳥の世話・・・・・

友達と山菜や木の実を採り、蛇やカエル、虫を捕まえた
貧困、不便な生活と引き換えに自然から多くを学んだ

やがて神戸に帰ると弟たちと家事を手伝った
炊事、風呂焚き、ごみ焼却、掃除、大工仕事

木材、かんな、のこぎり、金づち、釘やねじを使っての工作には
力学、幾何学の生きた知識が求められた
暖房は炭火を使った火鉢やコタツで技量がいる

これらは本物の理科の実習
理屈で説明できなくても体験で習得できる「暗黙の知」の宝庫だった

学校や塾で教える論理的に整理された「形式知」では
補えない知恵を育てる

現代人は人工都市に住み、あえて安楽で効率優先の生活様式を選択した
それが人間本来の感性を劣化させているように思えてならない

・・・このような話をお年寄りの懐古趣味のように受け止めて反発する若い世代も
いるかもしれませんね。実際に経験していなければ納得理解できないかもしれません。
でも、これは少なくとも科学者からの視点で指摘されています。
よくは分からないけど、土いじりをすると癒やされたり、自然の中に身をおいた時に
何ともいえぬなつかしさや解放感を感じることは、誰にでもあるのではないでしょうか?
私達人間もまた自然の中で生かされている生き物なんですね・・・・・・

<コブシの花が咲いています>