・イギリス教育省調査報告書「エルトン・リポート」では
いじめは個人レベルの問題ではなく、学校という場の秩序や
安全を犯し、教育環境に被害を及ぼす行為であり、
ひいては在籍する子どもたちや教師にも悪影響を及ぼすことを
十分理解したうえで対応する必要があると指摘する
・いじめ問題をどう解決するか。
1つはいじめられている子どもを被害から救い出し
再び被害に遭わないようにすることである
しかし、いじめによる被害が内面にあるという性質と
子どもの成長・発達という観点に立って考えるとこれだけでは十分ではない
内面の傷痕を回復させ、いじめを受けた子どもの成長に障害となっている
事態を取り除くことが必要である
表面上のトラブルが解決したことをもって「いじめの終結」とみなすべきではない
子どもの内面についた傷痕の修復に至らなければ、いじめの真の解決が
図られたとはいえない
・学校教育の場では「いのちの大切さ」を教えるプログラムが実施される
しかしそのプログラムを見ると多くの場合、生物学的な「いのち」を
想定しているようである。しかしいじめによって失われるものは生物体としての
生命だけではない。自己の尊厳や自己肯定感、あるいは自己実現を図っていく
「人間存在」としてのいのちも失われていく。
仲間集団とのつながりに生きている証を感じ自分がこの世に存在し、
生きていることが何かの役に立っているという社会的な有用感など
「社会的存在」としてのいのちも萎えさせてしまうのがいじめである
・いじめられた子どもの中で被害を受けたことを教師に相談するのは25%
自分がいじめられたことを教師が知っているのは52%
言い換えれば教師が認知しているいじめ被害の半数は当事者以外からの
情報や状況の認識よっている
・いじめを知った教師の80%はいじめをなくそうとしてくれた
その結果「いじめはなくなった、少なくなった」と答えた子どもは65%
「ひどくなった」と答えた子どもは6%であった
教師が介入するとかえって事態が悪化すると思われがちだが、
そうした思い込みは誤っていることを示唆している
・子どものいじめ被害を親が認知しているのは27%、
男女でも小中学生でも大きな差がない。
子どもからいじめ被害を打ち明けられているのに
いじめ被害はないとしている親が40%もいる
子どものいじめ加害を知っている親は7%である
・イギリス・オランダ・日本の仲裁者、傍観者の出現比率調査によれば
仲裁者はいずれの国でも小5では45〜60%前後でその後減少するが
中学になるとイギリス、オランダは上昇していくが、日本は下がり続け中3では20%
傍観者はいずれの国も小5では20%〜30%だがその後増えていく
中学になるとイギリス、オランダは減少するが日本では増え続け中3では60%になる
傍観者の多さはいじめ被害の発生数とは高い相関を示しいじめに対して
暗黙の支持を与え、傍観者が少なくなれば仲裁者が現れやすくなる
・いじめは日常の生活世界で起きている。したがっていじめに歯止めをかけるには
抑止力を日常生活に埋め込んで自浄作用を図る事が不可欠であり
それを市民性教育に委ねているのだ。
中でもイギリス、フランスは市民性教育に重点をおいている。
イギリスでは「シティズンシップ」が義務化され、具体的には児童生徒の
自己肯定感や責任感の育成、自立の精神など自己の確立と他者への配慮や
畏敬の念あるいは人との違いを尊重することなど
「他者との良い関わり」を培うことを柱とした内容となっている。
<きんもくせいの香りがします>