第三の敗戦 心の廃虚からの復興 上田紀行より その2

また東日本大震災の被災地の救援に携わった
多くの人々の姿が若者たちの意識を変えたことも見逃せない
自衛隊員から行政の人々、数多くのNPOやボランティアたちが
被災者のために行動している姿は、
この社会にもまだまだ困窮している人を救う力があるのだ
ということを私たちに実感させた
この社会には「支え」があるのだということを
私たちは改めて認識させられたのである

困窮している人を誰かが救おうとしているとき
救われているのは困窮している人たちだけだはない
その姿を見て育つ子どもたちもまた救われている
人間は使い捨てなんかではない
あなたも人生で苦しむことがあっても、そこには必ず救いがある
そして正義感に燃えて間違ったことを間違っていると言って
一部の人から非難されることはあっても
社会全体は必ずあなたの勇気と正義感を褒めたたえるだろう
そうしたメッセージがどれだけ若者たちを励ますことだろう

そしてそのことに励まされるのは若者たちだけではない
私たち大人世代にとってもそれは支えとなるだろう
12年後の26年にはその年の出生者70万人に対して死亡者155万人と
誕生祝いの2倍の葬式を出す社会が私たちを待ち構えている
もちろんすべてのお年寄りがぽっくりと逝くわけではなく
多くは病を得て長期のケアが必要だ
その状況で「人間は使い捨てだ」という思想が蔓延していたとき何が起こるだろうか

若者たちに芽生えた支えと社会正義への思い
それを大人社会がまたつぶしてしまうようなことが起これば
その報いを受けるのはまさに年長世代の私たちにほかならない
それは誰もが幸福になることができない、不幸の連鎖の悪循環である

問われているのは年長世代の勇気ある行動である
自分の保身に汲々とする姿ではなく、社会の困窮に立ち向かい
よき未来を創り出そうとする気概ある姿を
どれだけ若い世代に見せることが出来るのか
「第三の敗戦」に導いたのが私たちならばそこからの復興もまた私たちの責務である
焼け野原と化した街を復興させたように
私たちは心の焼け野原の風景を今こそ描きかえていかなければならないのだ

<ハナカタバミが咲いています>