脳と心のゆがみを正す 子育て力 大島清より

・情緒とは、私たち人間のやさしさや思いやりといった
「心のゆとりに裏打ちされた知性」を意味します
感謝する気持ちを素直に表現できる感性に支えられた
人や生き物の生命や環境に対するやさしさとでも
言ったらいいでしょうか
情緒は他の動物には見られない、人間ならではの心のありようで
私たち人間が社会生活を営む上で不可欠な宝物です

・2000年7月に法務省が行った虐待調査によると
全国の少年院の2354人を調べたところ
家族からひどい暴力をふるわれた経験がある少年は約48%
軽い暴力も含めれば65%が被害を受けていました
家族以外の人からも含めると、何らかの虐待を受けていた少年は
何と96%にも上りました

・「頭がいい」というのはよりよい生き方を選択することが出来る脳を意味する
繰り返しますがなんでも丸暗記が出来て、記憶力の良い人が
頭のいい人ではありません

さらにもう少し具体的にいうならば「頭がいい」とは
人間のプログラミングセンターである前頭葉がよく洗練されており
ストックした多くの知識を、刻一刻と変化する周囲の環境に合わせて
縦横無尽に駆使できる脳であるといえるでしょう

例えば、自分のわからないことが出てきたときにはわかろうとし
一生懸命に方策を講じて探り、調べ、自分で発見することが出来るといったことです
私はこういう人を「カルチャーのある人」と呼んでいます

カルチャー(culture)とは本来「耕す」という意味を持っています
つまり何もなかった場所の土を耕して得たものが「文化」となるのです
したがってテレビのクイズ番組で優勝したから頭がいいとか
知識の詰め込み教育を受けて偏差値の高い大学を出たから
頭がいいなどとは言えません

特に実社会では複雑な人間関係をうまくコントロールしなければならない
場面が山ほどあります
この様な千変万化する環境に柔軟に対応できるには右脳の働きが必要です
頭をよくするにも、特に右脳の活性化が不可欠の要素となります

・問題なのは、知的な部分を受け持つ大脳新皮質ばかりが発達しすぎると
攻撃心が強くなったり、ことさら地位の向上を目指したり
順位にこだわるなどといった傾向が顕著となることです
人としての幅の広さは偏差値や知能指数といった単なる数字で表すことなど
出来るわけないにもかかわらず、そうなるのです

ここにまた大脳辺縁系が登場します
大脳辺縁系はトラブルを回避し、そうした危険な場所から後退する本能を備えています
この機能があるからこそ、世の中に順応しながらたくましくいきることができるし
人愛することや人の痛みを知るなどという精神的にも高いレベルの知性を
身につけることが出来るのです

物事に対して臨機応変に対処するにはいつも柔軟な頭を持っていなければなりません
頭の良さを振りかざしても敬遠されるだけです
自分本位の思考癖を持つ大脳新皮質と、周りと共存しようとする集団欲を持った
大脳辺縁系とのバランスをとりながら勉強に立ち向かうのが
バランス感覚を備えた人間への道なのです

・幼児期の五感の鍛え方が、その子どもの一生を左右することについては
既に述べた通りですが、原始感覚と呼ばれる触覚、味覚、嗅覚の
3つの原始感覚の多くは実は口の中にあります
つまり口をよく使うこと、よく咀嚼することで
幼児期の発達にとって不可欠な原始感覚が育まれるのです

原始感覚に限っていえば、脳に入る情報のうち足からの情報が4分の1を占めます
特に足の先は最も敏感です
次の4分の1は手からの情報です
そして残りの半分はあごからの情報です

皮膚の筋肉や腱からの感覚情報は大脳皮質の中心溝の後方に
ベルト状になった体制感覚野に送られます
体のどこの部分がそこに達するかを調べてみると
なんと半分以上が顔面からだったのです
上唇、下唇、歯茎、歯、舌などはすべてあごからの情報としてとらえられています
あごを動かすことによって人間は脳を大きくしていったのです
このことが極めて重要です

オギャーと生まれた赤ちゃんが、まだ歯もない口で生命の営みをかけて
母乳を吸啜します
それは口先で乳首を吸うという単純なものではなく
いわば顔面すべてを動かした運動です
しかも口は原始感覚(味覚、嗅覚、触覚)の宝庫です
赤ちゃんはその感覚をアンテナにとし顔面全体を駆使する吸啜作用によって
脳を発育させていきます

・また、かむと唾液が出ます。よくかむと1日に1,1から1,4リットルの唾液が出ます
唾液には細菌に抵抗し発育を抑制したり、ガン物質を弱くするなど
さまざまな免疫機能があることがわかっています
ですからよく噛めば病気を予防することができます

そればかりではありません。よく噛むと上昇した血糖値情報が働いて
耳下腺からインスリン様物質、さらに1時間後には脳と小腸から記憶と学習に
かかわりの深い海馬を刺激するホルモン(FGF,CCK),が分泌されることも
あきらかになりました

<シャコバサボテンが咲いています>