*文部省の緊急アピール
文部省は急きょ「いじめ緊急対策会議」を設置し
第1回の会議で緊急アピールを発表している
このアピールには大河内君の事件の性格を踏まえて
これまでのいじめの認識と異なる点が含まれている
まず、冒頭に「直ちに学校を挙げて総点検を行うとともに
実情を把握し適切な対応をとること」を挙げている
いじめの実態把握にしても対応にしても不十分な点が
報道を通じて明らかになった中で、緊急事態を宣言し
総点検を求めたことは当然の措置である
また、その際に
「いじめがあるのではないかという問題意識を持って」
点検することを求めている
言い換えれば
「いじめは、いずれの学校でも起こりうる現象である」
という認識を文部省が示したともいえる
これは現場に対して反省と認識の変更を求めるものであり
その意義は大きい。
この提言は
「弱いものをいじめることは人間として絶対に許されない」
との認識を持って社会を挙げて対処することを求めたものである
その後の「いじめ緊急対策会議」での審議結果をまとめた報告の中でも
対応に当たっての基本認識として冒頭に再掲されている
「いじめの問題については、まず誰よりもいじめる側が悪いのだ
という認識に立ち毅然とした態度で臨むことが必要である
いじめは卑劣な行為であり人間として絶対に許されないという
自覚を促す指導を行い、その責任の所在を明確にすることが重要である
社会で許されない行為は子どもでも許されないものであり
児童生徒に何をしても責任を問われないという感覚を
持たせることは教育上も望ましくないと考えられる」
学校現場では、いじめはもちろん暴力行為についても
厳しく加害責任を求めず可能な限り教育的指導に
ゆだねる傾向がうかがわれた
特に刑事事件になりうる問題に関しては、警察の介入への
警戒感と自分たちの教育責任へのこだわりがあった
確かに『第1の波」以降に起きたいじめの中にも
刑法で規定する暴行や傷害に相当する事件は発生していた。
しかし、大河内君の事件には金銭の授受を伴う恐喝が
含まれていた点が特徴的だった。
警察の捜査で裏付けられた金額は数十万円だったが
報道や遺書ではこれを上回る高額な金銭の授受が示唆されただけに
「学校といえども治外法権の場ではない』という論調が
現れたのも無理からぬことであった