いじめとは何か 教室の問題、社会の問題 森田洋司より その4

*内面の傷を回復させるために
・内面についた傷が癒されない場合のもっと深刻な悲劇が
自らの命を絶つという行為である
いじめによって自殺までに追い詰められた事件が発生すると
学校教育の場では「いのちの大切さ」を教えるプログラムが
実施される

しかしそのプログラムを見ると多くの場合、
生物学的な「いのち」を想定しているようである
しかし、いじめによって失われるものは生物体としての
生命だけではない

自己の尊厳や自己肯定感、あるいは自己実現を図っていく
「人間存在」としてのいのちも失われていく。
仲間集団とのつながりに生きている証を感じ、
自分がこの世に存在し生きていることが
何かの役に立っているという社会的な有用感など、
「社会的存在」としてのいのちも
萎えさせてしまうのが、いじめである

いじめられた子どもたちは亡くなった鹿川君が遺書に書き留めたように
「生き地獄」を生きていることも少なくない。
それは、いじめの被害が身体的な苦痛にとどまらず
ヒトとしての存在にまで及び、社会的な死をもたらすからである