何事も古き世のみぞ慕わしき。
今様は無下にいやしくこそなりゆくめれ
「徒然草」の一節です
現代語に訳すと「何事につけても古い世ばかりが
慕わしく感じられる。
今風のものはひどく下品になっていくようだ」となります。
14世紀ごろに書かれたとされるこの作品にも、
今を否定し昔を懐かしむ気持ちが描かれています。
数百年を経た時代を生きる現代人にも、
同じような考え方は引き継がれているようです。
人は時代の変遷の中で失われたものに対して
強い思い入れを抱きます。
戦前の日本には近代化される前の世の中を
懐かしむ人がいました。
そして今日の日本には戦前を「古き良き時代」と
とらえる人がいます。
しかしそこで想起される時代像は必ずしも
当時の実情に即した社会の姿ではありません。
過去を美化し、今を悪くとらえる見解のなかには
根拠の薄い印象論が数多く見られます。
多くの場合、それは新しい社会秩序を育むために
生みだされた制度・システムと、それをもとに
想起されたイメージに過ぎません。
たとえば戦前は教育勅語や修身科があったから
人々は高い道徳心を備えており
社会秩序が保たれていたという幻想です。
<レンギョウの花が咲いていました>