日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか その13

児童精神科医の現場報告 古荘純一

親自身がぴりぴりしていて、常に余裕がなく子どもの心を受け止められなくなっている
それを子どもは本当は訴えたいのだけれど、それを言えなくて
「疲れてる」「うざい」「きもい」という言葉で訴えている、という状況が見えてきます
このような心の居場所のなさが最近の子どもたちの根源的な不安に
つながっているように思います

夫婦喧嘩だけでなく、塾通いなどの自分のペースを上回るオーバーペースを
子どもたちが強いられていることに、周囲が気づかない、ということも見受けられます
それも、大人の先行き不安が原因の一つであるように思います

さらに最近の子どもたちは情報過多のためか、驚くほどいろいろなことを知っています
例えば、小学校に入るか入らないかの子どもでさえ、私たちが子どものときには
語られなかった「虐待」「リストラ」などの言葉を、正確な定義はともかく
ネガティブなイメージとして認識しているように思います

情報の活用方法は分からないが、どんどん新しい情報が入ってくる
大人はその活用方法は教えてくれません。いや大人自身も教えられないことも
多いのではないでしょうか

いろいろな情報を持っており混乱気味の子どもたちは、同時に少子化の影響で
常に家族から、あるいは周囲の大人から観察されているために、周りの世界に
ひどく敏感と言えます。

両親、祖父母の期待を一身に背負わされ
期待に応える良い子であることを求められ、心が休まらない、と訴える子もいます
虐待を受けていないにもかかわらず、心理学的にはそれに類似した傾向を示し
非常に傷つきやすいのです

大人から発せられるメッセージを被害的に受け止め、
自身のイメージの中で外傷体験を持ち、強い被害者意識を抱いている子が見られます

比較的できの良い子どもでも、親からの期待につぶれそうになっています
結局、親自身の自尊感情が高くないと、子どもにそれを全部転化して
「この子はこうなってほしい」という想いを押し付けることにつながります

子どもが気に留めないタイプの子であればいいのですけれども
敏感な子だと全部それを受け止めてしまいますから、大変なストレスになります

<キンシバイがさいていました>