仕事が人間を頽廃させる 内山 節より

伝統的な社会では、職業倫理は自然に
形成されていた

仕事は仕事以外の要素と結ばれていたから
仕事に対する考え方も総合的につくられていたのである

暮らしや社会を壊すような仕事をしてはいけないし
仕事の中に文化や、ときには土着的な信仰も
内蔵されているのだから、そういう結びつきが
自然に職業倫理を成立させていた

ところが仕事が仕事だけで独立したものになると
仕事の都合、仕事の論理が独り歩きするようになったのである

こうして近代社会になると、自分や自分の企業の利益しか
考えない人が生まれてきた

さらには誠実に仕事をしているつもりでも
自分の職業だけの狭い世界の発想で行動し
結果的には社会を壊していくような現実も
発生するようになった

事実上の粉飾決算をおこなっていた東芝や
燃費データをごまかした三菱自動車や
ブラック企業的な経営をおこなう経営者
パナマ文書にみられる税から逃れようとする人たち
不祥事を繰り返す政治家
そして原発の危険性を無視しようとする人たち

私たちの社会にはそんな人たちがあふれるようになってしまった

職業は職業以外の世界との結びつきを失った時
職業だけが独り歩きするようになり頽廃していく

その結果たえず職業倫理の重要性が語られ
しかし現実には倫理観の欠如した事件が頻発し続ける
そんな時代を私たちは迎えている

<セイヨウジュウニヒトエが咲いていました>