高次脳機能障害公開講座(IN名古屋) 報告

厚生労働省では、平成13年度から17年度まで高次脳機能障害者支援モデル事業が行われ、平成18年10月から障害者自立支援法に定める高次脳機能障害支援普及事業が開始された。
 今回東海ブロック4県が集い、地域における関連機関の支援力向上やネットワーク化など、支援体制の確立を目指して、高次脳機能障害公開講座が開催された。
 公開講座に参加したコロポックルの役員から概要を報告します。

【開催日時】07年3月2日(金)
【開催場所】名古屋市立大学病院 新棟(病棟・中央診療棟)3階ホール

【プログラム】
◎第1部 「さらなる地域支援ネットワークの構築に向けて」(厚生労働科学研究)
 静岡県、岐阜県、三重県、愛知県における取り組みが紹介された。
・静岡では県内4ブロックに高次脳機能障害の相談拠点支援機関を設置し、支援コーディネーターを配置。支援従事者研修も基礎研修、専門研修を毎年実施し支援者の養成を行っている。
・三重県では中核となるリハビリ施設がないため松阪中央病院(救急と診断)七栗サナトリウム(回復期リハ)身体障害者福祉センターが社会復帰リハと就労支援に当たっている。病院→訓練→自宅へと途切れない支援をしているのが印象的であった。
《感想》
 高次脳機能障害者を支えるためには、医療機関・福祉施設・行政が連携をとり、継続した支援が必要である。そのために、現在相談業務を行っている支援者は、高次脳機能障害の特徴を理解し支援のポイントや方法など多くの事例を通して意見交換や研修を重ねていくことが重要である。

第2部 「高次脳機能障害者の在宅ケアに関する試行から」(日本損害保険協会助成事業)
・平成17年度から2カ年かけて名古屋リハが取り組んだ、「交通事故等による高次脳機能障害者の在宅ケアのあり方に関する調査研究」から、高次脳機能障害者に適した在宅サービスの提供の仕方や、今後の在宅ケアのあり方について報告し、ビデオによる実際の様子を紹介された。

・高次脳機能障害者の実態調査の結果、今後必要なサービスとして ①ガイドヘルプ、②ホームヘルプ、③グループホームケア、④ITサポートの4種類が上挙げられた。
・既に、他の障害において利用されている在宅サービスを、高次脳機能障害者に活用するにはどうしたらよいか、サービスを訓練的に活用することで自立生活は可能か、最後に普及を含めた今後の課題 を明らかにすることが試行の目的である。その中からガイドヘルパー試行報告をまとめる。

サービスを利用に当たってのケアコーディネートについて
1、アセスメント:
 当事者が外出場面でどのように困るかを考える。その人によって、「目印が探せない」「時間の逆算が出来ない」などポイントが異なる。
2、代償手段(プランニング):
 ①状況の把握(どこで迷うか、迷ったときの対処方法など特徴を知る)
 ②ルートの設定(目印や分かりやすさ)
 ②外出のヒントカードの作成(例:階段を上ったら180度向きを変える等)
 配慮すべき点 目印探索力、携帯しやすさ、カードの羞恥心、カードのしまい場所
3、ガイドヘルパーへの研修:
 ①高次脳機能障害一般について
 ②外出・訓練の方法について
 ③本人の概要と対応について(行動が止まったときどうするか、間違ったとき、怒り出した時 などの方法を決めておき おなじ対応が出来る様にした)
4、連絡調整:サービス事業者との情報交換
5、モニタリング:対応や目印、メモ、ヒントカードの修正など
6、終結:本人の単独外出を目指しガイドヘルパーは 距離をおき見守り、迷ったときにヒントを与えるなどを繰り返し、安全が確認されれば終結とする。
7、課題;
 ①アセスメントや修正、連絡調整がなど支援コーディネーターの存在
 ②人材の育成、研修の必要性

≪感想≫
 今回の試行実践の報告を聞き、全てのサービスにおいて共通する視点が、「その人が地域で生活をするためには、どのような支援すれば自立することができるか」である。またその特徴として、支援者は本人の意思を尊重しながら、本人が出来るように見守る、必要なときに手を貸す、ヒントを与えるなど、日常生活に、訓練的に、意図的に関わることが重要である。
 高次脳機能障害者達は、生活を整える・自立に向けての準備などが不得意な人たちです。そのため、生活自立のコーディネーター「生活のジョブコーチ」が必要と確信しました。
 報告では、事例数は少ないが当事者の特徴や癖を掴んだ支援者が、一人ひとりを大切に関わっている様子が伝わり、家族では出来ない事を専門家が支えてくれていると感じ嬉しく思った。こうした地道な積み重ねが彼らの生活自立には欠かせない。
 今後高次脳機能障害者たちは、色々なサービスや支援してくれる人たちの力を借りながら、地域で生活して行かなければならない。現在関わっているサービスや今ある既存のサービスの中に、高次脳機能障害を取り込みながら連携して行くことが大切である。
 そのためには、支援コディネ—ターを多数養成して各施設に設置し、高次脳機能障害者の人たちに関わることができるよう、医療・福祉関係者は基より行政や一般にも普及・啓蒙活動をして行くことが急務と思われる。