先日、宇治市にある旧京都府茶業会議所を見学し、伝統建築保存・活用マネージャー講座(上級講座)において登録文化財申請にむけた報告書をまとめられた中村正則さんにお話しをうかがいました。この日は、活マネ(伝統建築保存・活用マネージャー)に呼びかけ、4人が宇治駅集合し現地に向かいました。旧京都府茶業会議所は、宇治橋より宇治川上流へ5分ほど歩いたところにあります。
茶業会議所が建てられた経緯は、1859年横浜に貿易港が開港、1867年に神戸開港が決定し、日本茶の輸出料が増えました。好景気を良いことに質の悪いお茶を出荷する業者もあらわれ、業界全体の信用を失う危機におちいり、事態を危惧した業界有志で製茶会社をおこし、品質管理などに努めました。そよのうなことから政府が各地に茶業組合結成を要請し、京都府内の管区ごとに茶業組合が生まれ、それらを統括する「京都府下茶業組合取締まり所」(現在の社団法人京都府茶業会議所)が伏見区に置かれました。その後、事務所の移動が何度かあり、昭和3年に宇治市に木造2階建ての事務所が新築されました。その建物が今回、見学させていただいた旧京都府茶業会議所です。
現在、京都府茶業会議所は別の場所に新築移転したため、この建物は「匠の館」と称し、一般の方々にお茶の入れ方教室や茶香服(聞き茶)などを行って宇治茶業の振興を担っています。ひとつの産業の歴史を建物を通して知ることができました。いつも何かに追われているような現代の生活では、ペットボトルは便利かもしれませんが、忙しい時にでも一息ついて、お茶を入れて飲むゆとりも必要だなーと考えさせられました。前に宇治川が流れ、とても落ち着ける場所です。隣接する建物ではお茶とお菓子のセットメニューもありますので、散策に来られたらぜひお茶を召しあがってください。