風景にとけこむ小さな文化財

兵庫県篠山市の田園風景の中に土壁の小屋がポツンポツンとありました。気になって調べてみると、それは、灰屋(はんや)と呼ばれるもので、田畑の肥料とする灰をつくるための小屋だとわかりました。今はあまり使われていないようですが、役割を十分に担ってきたであろう灰屋は、それだけで何か魅かれる美しさを持っているように思えました。

愛媛県の内子町を訪ねた時に山間の集落で見た小屋は「ベーハ小屋」と呼ばれるものでした。アメリカ産のタバコ(=米葉)を乾燥させるための小屋だそうです。ベーハー小屋は集落の中にあって風景になじみ、換気のための腰屋根(3階建てのように見える部分)がどこかユーモラスな印象を与えるのですが、最近では使われていないようでした。役割を終えれば朽ちていくしかないのかもしれませんが、日本の風景の中で「美しい」と思えるものがなくなっていくのは、さびしいです。(よ)