古材市プロジェクトの活動記録
2018年の秋、古材などの再利用で京都市から相談を受けた解体が三日後に迫った大きな町家(かつて白生地を主に商っていた大店)に入った折、会の“古材市チーム”が見つけた屏風6点(六曲一双と六曲二双)が1月25日、京都市美術館に引き取られた。
その屏風は敷地の奥に建つ蔵の2階でホコリにまみれた杉の収納箱に収まっていて、2点(一双)は南画、傷みのひどい残り4点(二双)は日本画であり長い間蔵から出してもらえなかった様子。屏風が見つかったことを所有者に伝えてもらったところ「要らない」とのこと。価値も分からぬまま他の建具などと一緒に会で引き取った美術品だった。
京都市に「屏風はどこかで引き取ってもらえないか」と写真を添えメールで連絡を入れると、市の担当から、「京都市美術館の学芸員が、名のある作者の作品かもしれないので見せてほしいとおっしゃっている」と返事があり、昨年11月15日、鑑定に来られた市美術館学芸員の後藤結美子さんから「真作です、市美術館で作品を管理させてほしい」と告げられた。
その後は美術館が所有者と連絡をとり寄贈の手続きを経て1月25日、会員が所有する北区原谷の倉庫から美術品運搬専用トラックに乗せられ旅立った。
「市内には代々受け継がれた美術品をお持ちの方は多くいらっしゃるのですが、自ら申し出てくださったり、紹介でこられたりする方がほとんど。今回のように廃棄処分を依頼された中から救われたというのは初めて。私たちが知る前に大体は古物商が入られ、持っていかれる場合も多いので稀な事例です」とのこと。
水墨風2点は南画家の白倉嘉入(しらくら・かにゅう)、別号二峰の作品。状態がよく現状のままでも展示できるそうだ。残りの日本画4点は春夏秋冬がテーマ。作者の都路華香(つじ・かこう)は幸野楳嶺(こうの・ばいれい)の弟子で竹内栖鳳らと並び、四天王と呼ばれ、京都絵専・京美工の校長として後進の指導にもあたった。都路華香の作品は美術館の展示に耐えられるまで修復するには相当費用と時間がかかるとか。こんなビッグな遭遇も古材市チームの醍醐味。みなさん、一緒に活動しませんか。 (平井 忠)
〔古材文化144 2019年3月1日発行より〕