歌枕としても知られる宮城県塩竈は、塩竈神社の門前町として、また港町として栄えてきました。市の中心部にある本町(もとまち)通り商店街も、かつてはたいへん繁栄したといいます。しかし今では郊外型の量販店へと客足が遠のき、塩竈神社や塩竈魚市場めあての観光客も、バスで直接目当てのスポットへ乗りつけ、そのまま松島や仙台へ。本町通りは「浦霞」醸造元として知られる佐浦さん以外はほとんど素通り状態だそうです。
そこで街の有志が立ち上げたのが「本町通りまちづくり研究会」(通称「まち研)。最初はいろいろ言われたりしたんだそうですが、今では本町通りのほとんどの商店が入っており、株式会社化やNPO化を検討しているというお話も。
さて、そのまち研がまちおこしのために考えたのが、大漁旗を商店街の両側にずらーっと掲揚し、塩竈神社へ初詣に訪れる参拝客を迎えたり、海の日に行われる塩竈みなとまつりを盛り上げたりするというものでした。
これも最初は大漁旗がロープに巻きついてしまったり、うちの前にはやめてくれというお店があったりとたいへんだったそうなのですが、今ではすっかり本町通りの風物詩となっています。
そんな中、縁あって本町通りを訪れた私は、「じゃあ大漁旗でクリスマスツリーをつくりましょう」と「大漁旗ツリープロジェクト」を提案。まち研とともにこの企画を進めました。
例によってブログを立ち上げ(こちら。ボランタリー.jpさんにはいつもお世話になっております)、本町通りのお店を一軒一軒レポートしながら、「大漁旗ツリー」の説明をして回りました。
やがて大漁旗ツリー設置当日。魚網加工業者である小泉魚網さんの技術協力とまち研メンバーの力により、大漁旗によるクリスマスツリーというアート作品ができあがりました。先日ご紹介した「GOTEN GOTEN アート湯治祭」の東鳴子ゆめ会議メンバーも応援にかけつけ、地域間の草の根交流も促進。ネットワーク企画として、今年夏、東鳴子に大漁旗の橋をかける「大漁旗ブリッジ」や、鳴子の米を3輪自転車「トライク」に乗せて、塩釜までの約70キロを走破、日本一うまいにぎり飯をつくる「アートライク・塩の道」なるアート・プロジェクトも企画中です。
また、本町通りを歩いてもらおうと、本町通りを舞台にしたアート・プロジェクト「もとまちアートウォーク」を、目下、まち研のみなさんと準備を進めています。
これはアート作品というものが街に降ってわいてくるようなものではなく、すでに街にあって見過ごされているものを見えるようにするようなものを考えています。
私は、商店街あるいは街というのは、単なる経済活動の場、単にものを売り買いする場ではないと考えています。そこには私と私以外の人、あなたや彼・彼女がいてはじめて成立するもの、コミュニケーションがまずあって、それを成立させるために売買があり、お仕事があり、教育があり、芸術があり…というものだと考えています。そしてそれを文化と呼んでいるのではないかと思います。
芸術家が文化をつくるのではなく、街こそが文化をつくるのではないか、それが今私がいだいている思いです。
(コメント:門脇篤)