4月14日は、近江八幡の三大火祭のひとつ、『八幡祭』の宵宮祭があった。
この『八幡祭』と、島町の松明・太鼓祭は、起源も内容もほぼ一緒。
実は、近江八幡周辺では、そこらじゅう、ほとんど全ての集落の神社という神社で、この時期(3月下旬〜5月上旬)に、巨大松明を燃やして大太鼓が渡る祭が行われている。
たまたま近江八幡で一番大きな『日牟禮八幡宮』に奉納される祭が『八幡祭』と称され、氏子が多い分、一番規模が大きくて華やかなことから、観光客がたくさん押し寄せる有名な祭になったが、八幡祭だけが松明・太鼓祭ではないことは、地元でも都市部や旧市街に住む人たちは意外に知らないことも。
で、今日はその『八幡祭』で、島町での松明&太鼓のイメージトレーニングをすべく、カメラを持って宵宮に行ってきた。
八幡祭に限らず、この時期、この地域では「子ども松明」というミニチュア版の松明が市販されている。
祭が本格的に始まるまでの間に、この「子ども松明」が家族の手で次々燃やされるのだ。
男の子のいる家では、昔は父親か祖父が男の子の人数分、子ども松明を手づくりしていたが、今はたいてい購入しているようだ。
また、写真にあるように、男の子だけでなく、女の子用に松明を奉納する人もいるみたい。昔は「女が松明を触るとけがれる」と言って、女性は常に松明から遠ざけられていたそうで、老人世代の女性は今でも松明には近寄ろうとしない。
こうやって時代に応じてルールを変容させていくことは、いいことだと思う。
同じ八幡祭の氏子でも、集落によって奉納する松明にはそれぞれ個性がある。
北ノ庄町の「ひきずり松明」もそのひとつ。
その名の通り、火のついた松明を若衆が引きずって走るのだ。
その際、男どもが甲高い裏声で「パイ!パイ!」と叫びながら走る。どういう意味があるのかは分からない。
で、「子ども松明」を燃やしている神社の境内で、面白い場面に出くわした。
その北ノ庄から来た4〜5歳くらいの男の子が、北ノ庄男児らしく、市販のミニチュア松明ではなく、北ノ庄オリジナルの「子ども引きずり松明」を持ってきて火をつけ、ハッピを着て、「パイ!パイ!」とかわいい声で叫びながらそこらじゅうを駆け回っていた。
もちろん、周りには家族や北ノ庄の隣人たちがいて、彼をはやし立てている。
いやはや、このぐらい小さなときから毎年こんな体験をしていたら、青年になっても絶対祭り好きになるやろなぁ。すたれることもないやろなぁ。
ちなみに、コレ→がホンモノの「引きずり松明」。
丸太の心棒が入っていて、なかなか重たそう。
火がついたまま、大人4人ぐらいで引っ張って走り、日牟禮八幡宮の楼門をくぐって奉火する。
引きずり松明が通り過ぎたあとの火の粉の道が、またアーティスティックで印象的。
松明と切っても切れないのが、大太鼓。
写真のように男衆がかつぎ、練りながら太鼓を叩き続ける。
それにしても、和太鼓の音はどうしてこうも魂をゆさぶるのだろう。
天高く燃ゆる松明の光と熱、低く深く響く太鼓の音、そして神聖なる神社のスピリチュアルな空間。
この祭がどうして千数百年もの長きに渡って続いているのか、何となく、分かる気がする。