寄付税制はどうなるか−政府税制調査会が平成19年度答申を発表

政府税制調査会は昨日20日、「抜本的な税制改革に向けた基本的な考え方」と題した答申を発表した。マスコミでも大きく取り上げられたが、その関心が消費税に向けられていたのは当然であるが、私(伊藤)は、個人住民税や公益法人税制に関る「寄付税制のあり方」に関心があった。
 それは東京自治研究センターが社団法人であり、今すすめられている公益法人改革の渦中にあることと、私自身もNPO法人の理事を勉めており、かねてから寄付税制の改革に関心があったからである。以下答申の中から、個人住民税における寄付税制に関するところと、公益法人税制に関するところを抜粋して掲載したい。
 今回の答申は消費税もふくめて抽象的なところが多い。今後は自民党税制調査会がどう判断するか、ということになる。いずれにしても、次年度に向けた税制改正は年内に決着することになる。

政府税制調査会平成19年度答申の全文
http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/top.html

■ 個人住民税
□ 寄附金税制のあり方

地域に密着した民間の非営利活動の促進は、地方公共団体の行政サービスとの協働という観点からも重要な課題であり、後述する新たな公益法人制度の導入等も踏まえ、個人住民税における寄附金税制のあり方について検討することが必要である。その際、「地域社会の会費」としての個人住民税の性格や地方分権の観点も踏まえ、寄附金税制の仕組みは、基本的に条例などにより地方公共団体によって独自に構築されるべきと考えられる。なお、控除方式については、納税者にとっての効果の分かりやすさという観点などから、現行の所得控除方式を税額
控除方式とすることについて検討する必要がある。現行10 万円の適用下限額については、大幅に引き下げることが適当である。
また、納税者が「ふるさと」と考える地方公共団体に対する貢献や応援が可能となる税制上の方策を実現することが求められており、寄附金税制を活用した仕組みについて検討することが必要である。その際、控除方式について、納税者が効果を実感しやすく、分かりやすいものとなるよう、現行の所得控除方式を改め税額控除方式とし、税額控除の割合はできるだけ高く設定することが適当であるとの意見がある。一方で、一定の上限まで全額控除することや自己負担の少ない仕組みとすることが寄附金税制として適当か、といった意見がある。なお、現
行の適用下限額については大幅に引き下げるべきである。
いずれにしても、上記の様々な指摘等も踏まえ、分かりやすく、簡素な仕組みを構築するという観点にも留意しつつ、地方公共団体に対する寄附金も含め、個人住民税の寄附金税制のあり方について検討を進める必要がある。

■ 公益法人税制
我が国の社会を活力あるものとしていくために、行政部門だけでなく「民間が担う公益」の重要性が今後ますます増大すると考えられる。現在、その担い手となる公益法人に係る制度改革が進められており、来年12 月から新制度(いわゆる公益法人関連三法8)が施行予定である。これに伴い、税制面でも、「民間が担う公益」を支える制度の構築が求められている。
この点については、当調査会では、平成17 年6月に基礎問題小委員会・非営利法人課税ワーキンググループにおいて「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」をまとめており、そこで示された考え方に即して税制上の措置が講じられるべきであるが、改めて以下の点を指摘しておきたい。
第一に、新たに創設される公益社団法人・公益財団法人については、第三者委員会の認定を受けて公益を目的とした事業を担い、公益目的事業財産という新たな概念に基づき、公益目的事業の遂行等が求められる法人であり、公益目的事業から生ずる所得の取扱いなどに関して、公益目的事業の実施をサポートする措置を講じるべきである。
第二に、新たに創設される一般社団法人・一般財団法人については、準則主義により設立可能であり、多様な態様のものが現れることが予想されるところである。このため、一律の取扱いとすることは適当ではなく、他の法人等に対する課税とのバランスにも留意しつつ、態様に応じた措置を講じるべきである。
第三に、民間が担う公益活動を資金面で支えるうえで寄附の役割は重要である。このため、特定公益増進法人9の中に公益社団法人・公益財団法人を位置付けることにより、寄附を行った個人・法人が寄附金控除等を受けることができるようにするとともに、個人による現物の寄附に配慮するなど、寄附を行うための環境整備を進めるべきである。
なお、個人住民税における寄附金税制のあり方については、前述した方向性も踏まえ、検討を進めるべきである。
第四に、新たに創設される法人が租税回避に濫用されないよう、現行の公益法人等に関する租税回避の防止措置をも考慮し、適切な措置を講じるべきである。
第五に、現行の社団法人・財団法人が一般社団法人・一般財団法人に移行する際に公益を目的とした事業の継続が求められる場合があり、そうしたケースをどう取り扱うかについての検討が必要である。