「多治見市健全な財政に関する条例」−自治体独自の財政規律、規範を定める

私(伊藤)も出席した一昨日の都市政策研究会で、講師としてお招きした沼尾波子さん(日本大学経済学部准教授)が、「多治見市健全な財政に関する条例」を紹介された。
昨年の通常国会で「自治体財政健全化法」が策定され、新たな4つの財政指標と、財政健全化等に関する基準が定められることになった。しかしこの健全化法は、あくまで国家統治による破綻法制である。
これに対して多治見市の条例は、国による統制ではなく、独自に財務指標も定め、規範を明確化し、行政と議会、市民による財務情報の共有によって、財政民主主義の確立を目指す画期的な条例である。
詳しくは、多治見市政策開発室が条例を策定するにあたって、市民に発信した以下の考え方を参照してください。

<多治見市政策開発室の考え方>
自治体財政をめぐる状況
1. 地方制度の改革
地方分権の進展により、自治体財政の護送船団とも言える体制が終焉し、起債の自由化、地方交付税の減少などにより、自治体財政が市場の評価を受けるようになると考えられます。
2. 市民の関心
財政破綻を起こした自治体に関する報道などにより、市財政に対する市民の関心が高まっています。
3. 議会と市財政の関係
現在、第166回国会において、地方公共団体の財政の健全化に関する法律案〔新再建法〕が審議されており、議会の市財政への関わり方が強くなる見込みです。また、新再建法の制定後も、債務調整に関する議論などで、市財政に関する市民、議会、首長、職員の責任などが議論されていくものと考えられます。
財務条例の必要性
これらの情勢も踏まえ、自治体が自ら財務を律する規律の確立は、喫緊の課題となっています。
財政規模の長期的な縮小傾向を見据えると、将来世代の負担を圧縮し、市財政の健全な運営を維持、向上していく必要があります。
このため、市民、議会による市財政の監視、規律の強化を図るとともに、市民、議会、首長〔+行政機構〕で共有できる財務に関するルールを確立する必要があります。
立案にあたっての考え方
1. 条例の目的
市政基本条例が市政の枠組みを定めることにより、市民自治の確立を図るのと同様に、財務条例は、財務上の規範を定めることにより、財政民主主義の確立を図ることを究極的な目的とします。
2. 方向性
世代間負担の公平性を考慮した持続可能な財務の確立を目指します。
総合計画との関連
第6次総合計画を財政面での裏打ちのあるものとして策定することにより、真に必要な施策に充てる財源を確保し、第6次総合計画の確実な実行を図ります。

多治見市健全な財政に関する条例
http://www.city.tajimi.gifu.jp/seisaku/political_finance/finance_act/ordinance/ordinance-20071217.pdf
多治見市健全な財政に関する条例施行規則(案) (パブリックコメント手続き中)
http://www.city.tajimi.gifu.jp/seisaku/political_finance/finance_act/enforcement-regulation-20080116.pdf
政策開発室のホームページ
http://www.city.tajimi.gifu.jp/seisaku/index.html
この条例をテーマとした講演会
http://www.city.tajimi.gifu.jp/seisaku/political_finance/finance_act/news080227.html