本書のブックカバーの裏面には次にように書かれている。
『現在の高齢者における「格差」「貧困」問題は、これから高齢化社会の深化する日本社会にとって、大きな課題であり、必ず是正しなくてはならないテーマである。今からその方向性を導きださなければ、永久に高齢者の「格差」「貧困」問題は解決されないだろう』。
そうした問題解決のためには、まず「現場」の実態把握が重要である。本書の編者の一人である結城康博さんはその「現場」にこだわってきた方であり、もう一人の編者の嘉山隆司さんは、現在も都内の福祉事務所で働いている。まさに本書は、「現場からの報告」である。
それぞれの章の執筆者も、ケアマネージャーや特別養護老人ホームの施設長、ソーシャルワーカー、相談員、救急医師などとして現場の第一線で「高齢者の現場」に関わっておられる方ばかりである。ぜひ、皆さんに読んで頂きたいと思う。
岩波書店発行:定価2100円+税
編者:結城康博・嘉山隆司
目次
第1章 現場から見える高齢者の格差
第2章 国民年金受給者と関わって
第3章 高齢者の貧困と特別養護老人ホームを取り巻く問題
第4章 家族関係の貧困とその現状—急性期病院のソーシャルワーカーから
第5章 無届け有料老人ホームは問題か
第6章 路上に生きる「老後」を看護師の立場から看る—山谷地域の現在
第7章 しわ寄せは弱者に向かう—地方の高齢者問題
第8章 医療現場で考える貧困
第9章 高齢者にとっての最後の砦は“生活保護”!?
第10章 社会から排除されない、ということ