緊急声明—生活保護をめぐる世論に問題あり—個”や“尊厳”が原点

 障害者の生活保障を要求する連絡会議は5月29日、緊急声明を発表した。以下、全文である。

<緊急声明>
 日本は、いつからこうなってしまったんだろう。有名タレントの親が生活保護を受けていたことが明らかにされ、そのタレントは、自民党議員やマスコミから批判にさらされてしまう中、小宮山厚生労働大臣は扶養照会など、生活保護の適正な運用を明らかにしている。
 今私たちが直面している問題は、ワーキングプアの問題であり、非正規雇用の増大であり、年をとってからの介護の問題であり、生活保障のあり方の問題ではないだろうか。年間自殺者は3万人を超えており、また生活保護を受けられず餓死してしまった事件も何件か明らかになっている。
 今回のバッシングともいえる現象は、それだけ皆の生活が厳しい状況に置かれていることの裏返しといえる。
 私たち障害者は親をはじめ家族から独立して生活できる所得保障など、社会的基盤の確立をずっと訴えてきた。家族の思いや重荷から自由に生きる権利があると考えるからだ。
 たとえ億万長者の子どもが障害者であったとしても、その人は成人になれば家族から自由になる権利があるはずである。家族からの独立や自由が認められなければ、いつまでたっても障害者は保護の対象から抜けきることはできない。金持ちの子どもは親から扶養してもらえばよい、という理屈は、障害のある本人からすれば、一生家族に隷属せよ、と言われていることと同じである。金持ちの親は、きちんとそれだけの税を納めていけば良いだけの話である。その税額が低ければ高くすれば良い。
 今回の問題は、障害とは直接的にはあまり関係がない話と受け取れるが、親子の良い関係性という視点に立ってみても、子どもに多くの収入があるからといって、子どもが親を扶養しなければならない、というような迫り方をする今の社会風潮は、あまりにも個や尊厳を他人事のようにしてしまっているようで、恐ろしい状況だと思う。
 障害者政策はもちろんであるが、今の社会で本当に解決しなければならない問題は何なのか、その原点は何か、きちんと見つめ直す必要がある。
 2012年5月29日
 障害者の生活保障を要求する連絡会議

障害連 Tel 03-5282-0016 fax 03-5282-0017
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