植村花菜さんの避難所訪問

今日(正確には昨日)の夕方のテレビで、「トイレの神様」で有名なシンガーソングライターの植村花菜さんの避難所訪問の様子が報道されました。

福島県から避難している100人余りの方が生活する、栃木県の避難所でのコンサート。「トイレの神様」の歌を聞きながら涙する女性が何人も映っていました。

植村花菜さん自身が阪神大震災を経験していることもあり、MCの中で「その怖さがわかります」という言葉に真実が感じられました。屋外にテントを張って椅子を並べただけの会場だからこそ、人柄や音楽性が素のままで伝わり、人々の心から何かが溢れてきたのでしょう。

一人の女性の言葉が印象的でした。50代後半ぐらいのその女性は、「いままでは歌を聞いても何も感じなかった。でも今日植村さんの歌を聞いて、色々なことを思えて良かった。以前より少しは前向きになれているのかもしれない。」というような内容のことを話されていました。

音楽が本当にその力を発揮するのは、人が大きな悲しみに出会って間もない時ではなく、それからしばらく時が過ぎた後なんですね。震災から1カ月半が過ぎての訪問と言うのは、適切な時期だったのかもしれないと感じました。

そのことは私自身も体験があります。心も体も打ちひしがれた時、大きな悲しみに沈む時は、文字を読んだり音楽に耳を傾けること自体が、とても辛いものです。読むにしても聴くにしても体力や気力があって出来ることなのだと気づいたことがありました。

ですから、今回植村さんが被災者の方に歌を届けにでかけたのは、そういう体験をした方だからこその、「時」を見計らってのことだったのかもしれないと思いました。

そういう思いやりがあるからこそ、彼女の声や歌が、聴く人の心に届いたのだと感じます。何のために歌うのか。誰に届けるのか。それを聴いてくれる人はどんな状況なのか。そいいうことをとことん考えて、押しつけやひとりよがりでなく、共に「生きる」者としての訪問ができた彼女の謙虚な姿勢。見習いたいと強く思います。

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