映画「降りてゆく生き方」を観て〜発酵の力〜☆(*^_^*)☆

武田鉄矢さん主演の映画「降りてゆく生き方」が都心の千駄ヶ谷(北参道)で上映することを知って、さっそく行ってきました。

「降りてゆく生き方」は、2年前から各地で自主上映されている映画で.そこには、「自然と人間の調和する生き方」が描かれています。

この映画の中には、印象的なシーンが沢山あるのですが、特に私が心動かされたのは、武田さん演じる「五十六(いそろく)」が、山の中で熊と遭遇して、逃げ惑うシーンです。
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この熊は、実は母熊で、里に餌を求めて降りた時にはぐれてしまった小熊を探しています。五十六は、恐怖におののきますが、母熊は、小熊を連れて帰りたいだけなので、五十六を襲うことはせず、五十六の後をついて回ります。なぜなら、母熊は、小熊が保護されている檻のある家に行って小熊を連れて帰りたくて、五十六にそれを手伝ってもらいたかったからなのです。

なぜ襲われないのかが理解できない五十六にとって、母熊がそばにいること自体が恐怖で、山の斜面を転げ落ちたり、川の中に入ってずぶぬれになりながら、必死で熊から逃れようとします。そして、五十六は、母熊の存在におびえながら、森で夜を明かし、歌を歌いながら寝てしまいます。夜が明けて、目がさめても、熊は五十六の近くにいて、五十六を見ています。

命からがら里に戻ってきた五十六は、村の人に訳を話して小熊を檻から解放してもらいました。すると、小熊は、母熊の待っている方向に走り出して、母熊と一緒に森の中へ消えていきます。その2頭の後ろ姿を見届けて、恐怖と疲労から解放された五十六は、崩れるようにしゃがみこみました。

そして、村人に、頼むのです。自分に小さな土地を貸してほしいと。

その土地に、自分の墓を作りたいのだ、と。

「死」と隣り合わせになるような体験をした五十六は、その日以来、人が変わったようになります。いつ訪れるかわからない自分の死におびえるのではなく、むしろ、いつそれが来ても悔いのないように生きようと決意し、実際に彼の行動はこの日から変わり、村を乗っ取るような下心をもって村に入ったことを恥じながらも、村の人々の自然と調和して生きている日々の営みを守るために、力を尽くすようになります。
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人間はいつか必ず死ぬ。命あるものはいつか必ず死を迎える。このことは誰でも「知っている」ことです。しかし、それが本当に「分かった」時から、人は、自分の我欲を捨て、人生の意味をみつけ、使命感に生きるようになるのだと思います。そういう人間の「希望」を見せてもらったシーンが、この熊との遭遇と逃走と和解のシーンでした。

五十六が、死ぬ運命というものを本当に受け入れて、大きく変化する。そこから彼の人生は、「腐る」のではなく「発酵」し始めます。死ぬという当たり前の運命を受け入れて初めて、死に向かうのではなく「生」に向かう営みが始まったのです。それが、物やお金や地位名誉を求めて上にのぼってゆこうとする生き方から、180度異なる、いのちや自然や仲間とのつながりを求めて、大地に降りてゆく生き方、いのちへ降りてゆく生き方への転換点となります。

本当の意味で死を受け入れて生きるというのは、恐怖におののいてびくびくして生きるのではなく、堂々と輝いて「今」を生きるということなのですね。そしてそれは、誰にでも許されていることであり、誰にでもできることなのですね。

明日死んでしまうかもしれないと思ったら、ただおびえて身を縮めるのでなく、むしろのびのびと体を伸ばし、今日をとてもいとおしみ、大切にするでしょう。

一週間しか生きられないとしたら、きっとお世話になった人にお礼を言いに回ることに時間を使うでしょう。決して人を怒ったりなじったりなど、無意味なことに時間を浪費したりはしないでしょう。

人に親切にすることを忘れて、人にイライラして冷たい態度を取ったり、しなければならないことを先送りしたりするというのは、いずれも、いつ終わるとも知れない自分の「いのち」への暴力だと思うのです。いつまでも命が続いていくという幻想の上に立った、傲慢な態度、腹を立てて、眉間にしわを寄せて、大声で怒鳴るなど、ばかばかしい行為に、どれでだけ時間とエネルギーを浪費し、自分を正当化してきたか、その愚かさを痛感させられます。そんな選択を無自覚にしてしまわないよう、いつも人にも自分にも優しく穏やかでいたい。改めて今はそう思います。

そんな無自覚がこれまでの自分の中に確かにあったことを、昨日は真正面からつきつけられました。

熊は五十六になにも危害をあたえなかったように、「死」は誰にも危害を与えない。むしろ、そばにいることを意識するだけで、人は、一生懸命に謙虚になれるのかもしれません。

死は誰にも平等にやってきます。怖いものではない。だから、それを肯定的に捉えながら、今この瞬間を、明るく、誠実に、人にも自分にもできるかぎり親切に生きていたい、とこの映画を観て改めて思わされました。

このブログでは、映画の全体像をお伝えすることができませんでしたので、関心のある方はぜひ、インターネットで「降りてゆく生き方」を調べてみてくださいね。(*^_^*)

今日は、この映画を観るために、青森や長野や茨城からもお客様が集まり、スリランカから日本に来て滞在している男性も、上映後のディスカッションに熱心に参加されていました。総合プロデューサーの森田貴英さんをはじめとする、撮影や音楽担当のスタッフの主だった方々も会場での意見交換会に参加され、とても和気あいあいとした有意義な時間となりました。

森田さんをはじめ、スタッフの皆さん、このような上映会を開いてくださり、親しい交わりの時を持ってくださり本当にありがとうございました。素晴らしい作品に出会えたことに心から感謝しております。

会場で購入した書籍『降りてゆく生き方〜日と水と土〜』(一般社団法人降りてゆく生き方発行 2010初版)(河名秀郎著)は、とても良い本です。無肥料・自然栽培に関心のある方はもちろん、これからどう生きて行ったらいいかを模索している方には特におすすめできる本だと思います。著者の河名秀郎さんが、深刻なアトピーを自己治癒力を信頼して直していった壮絶なドラマにも、心打たれます。ぜひぜひ読んでみてくださいね!!

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