列車に揺られて1時間、大間々駅で下車すると、マンガン工場と、地元の醤油会社の石蔵を会場に使ったふたつの展示を駆け足で見て回りました。
こちらでは、どちらかと言えば展示されていた作品よりも、太い木製の梁に支えられた工場の建物や、大谷石の重厚な蔵の持つ空間の魅力に打たれました。こうした場所を見いだし、新しい角度からその魅力に照明を当てることも、地域アートプロジェクトの大切な役割と言えるでしょう。
というわけで、2駅の展示しか回ることができなかったので、とてもWAPを見たとは言えないかもしれません。また、地域の人々がWAPをどのように受け止めているかに関しても、短い滞在時間では十分知ることができませんでした。
しかし、なぜ学生たちがこの地域に惹かれてアートプロジェクトを行っているかに関しては、多少なりとも理解できたように思います。足尾銅山の歴史、渓谷の豊かな自然、そして古い工場や社宅などの地域資源の数々。ここにはまだ手つかずのテーマや素材がたくさんあります。そして、わたらせ渓谷鉄道という、小さな路線に沿って展開することで、おのずとプロジェクトとしてのまとまりが生まれてくるという利点も感じました。
他には、個々の展示とは別に、駅ごとに色分けされたバナーや、解り易く作られたマップなど、来場者への細やかな心遣いにも感心させられました。来年も再び同じような機会があれば、今度はぜひ頑張ってすべてのプロジェクトを回ってみようという気持ちになりました。
アーティストだけの力で、このように大きなプロジェクトを運営するのは大変なご苦労があったと思います。みなさん本当にお疲れさまでした。そして、当日それぞれの場所で、3人に快く応対していただいたアーティストやスタッフの方々に、この場を借りて心より感謝申し上げます。(曽我)