先週末は、四国松山のアートNPOカコアのお招きを受け、三津浜にあるカコアの拠点のアート蔵で向島のお話と、昨年制作した映画「SECTION1-2-3」の上映を行なって来ました。実はぼくは、四国を訪れるのは今回が生まれて初めての経験。おそらくただの旅行者としてなら、三津浜に足を向けることはなかったかもしれません。

三津浜は静かな漁師町で、江戸末期から昭和にいたるまでの民家や土蔵が、まちのあちこちにひっそりと現役で残っている、おもむきのある場所です。古いものが残っていながら、観光地のように開発されているのではなく、普通の生活の場であるというのが、どこか向島とも通じるところがあります。一方で、空き店舗や、マンション化などの問題を抱えているところも似ています。

思えばカコアとのおつきあいは、2004年、メンバーのお一人の田中さんが、向島の現代美術製作所を訪問して下さった時以来ですから、かれこれ4年目になります。その翌年の2005年に、カコアはAAFの公募プロジェクトに参加、同じく「水と魚の記憶」でAAFに参加したトリのマークが、この三津浜でもリーディング公演を行なっています。今回、その舞台となった渡し船や木村邸なども見ることが出来ました。また、今年3月に開催したアートまち大学の最終シンポジウムでは、カコア理事長の徳永さんにもお越しいただいて、お話を伺っています。というわけで、三津浜と向島は、ずいぶん以前からいろいろとご縁があったのでした。
ともあれ、アートプロジェクトのお陰で、こうして初めてのまちを訪ねる機会ができるというのは、本当に嬉しいことです。松山でのカコアのみなさんから受けた暖かいおもてなしに、この場を借りて改めて感謝いたします。

写真は近々取り壊されるという、伊予鉄道の三津浜駅舎。この駅舎をモチーフに、チェコでアニメーションを学んだアーティストの山内知江子さんが、カコアの企画でプロジェクトを準備しているところです。昭和初期に建てられたという可愛らしいデザインの木造の駅舎。まちの記憶がしみ込んだこの建物をめぐって、どのような作品が生まれるか期待したいと思います。

なお、三津浜と向島を結ぶプロジェクトも、現在進行しています。こちらは東京在住で松山出身の映像作家、杉田このみさんが、ふたつのまちをテーマに作品を制作することになり、向島サイドで現代美術製作所もそのお手伝いをちょっとだけさせていただいています。そのプロセスも、また改めてこのブログでご紹介しましょう。
山内さんと杉田さんの作品は、今年の末になりますが、12月7日に現代美術製作所で開かれるカコア主催のイベントにおいてご紹介する予定です。(曽我)