2009年度冬の造形クラス

《高学年造形クラス》
「アショカ王の柱」を制作する
 今からおよそ2300年前の古代インドには、強大な王国が存在していました。その王様にはたくさんの王子がありましたが、その中の一人、アショカは、他の王子よりも「身分が低い、容貌が醜い」からと、世継ぎとしては認めてもらえず、王様からは可愛がられることはなかったといいます。ある時、王様が病で倒れると、アショカは軍を率いて強引に王の座に就き、世継ぎとして決まっていた王子や逆らう者たちの命を奪い取ってしまいました。こうして残酷で横暴なアショカ王の名は、全国に知れ渡ることとなりました。
 野心に燃えるアショカ王は、隣国を支配しようと戦争を引き起こしますが、戦場でのあまりにひどい惨状に、残酷な王と言われたアショカの心にも深い後悔の念が起こったといいます。そしてある時、アショカ王は、粗末な衣服に身を包んだお坊さんに出会い、お釈迦様の教えについて知ります。

「お釈迦様の教えとは、どのようなものか?」
「平和の教えでございます。お釈迦様の教えには差別はありません。人間も動物も植物も命あるすべてのものは、この素晴らしい世界をつくる大切な存在なのです。人間の命を奪うことはもってのほか、動物も植物も大切に扱わなければなりません。また、人間は、生まれによって卑しい人になるわけでも、生まれによって尊い人になるわけでもありません。その人の行いによって卑しい人ともなり、行いによって尊い人ともなるのです。」

 その後、アショカ王は、もう戦争をしないことを誓いました。人々には「正しい行いをするための法」をつくり、それによって争いの少ない平和な国をつくろうと励みました。聖なる動物を表わした柱をたくさん建て、正しい行いについて記した文字を刻み、通りがかる人びとに見えるようにしました。更に、お釈迦様の教えを広めるために、たくさんのお坊さんを他の国々に派遣しました。こうしてお釈迦様の教えは、多くの人々のもとへと運ばれていきました。

細井信宏