マイナンバー制度が来年1月に始まる

国民一人一人に特定の番号を割り振って、税や社会保障の情報を一元的に管理する。そんなマイナンバー制度が来年1月に始まる。これに先立って政府は、制度の利用範囲を広げるマイナンバー法改正案を今国会に提出した。
 利点の一方でプライバシーの保護など多くの課題も指摘される制度である。政府は国民の不安解消に向け、制度の説明や周知に万全を期すべきだ。
 国民は番号カード1枚で各種の社会保障サービスが受けられ、行政機関も事務が効率化すると政府は言う。今年10月には個人番号が本人に通知される。
 改正案では予防接種や特定健康診査の情報など医療分野での活用を一部で認める。さらに政府は番号カードに健康保険証の役割を持たせることも検討している。確かに国民の利便性は高まるだろう。
 また2018年からは預金口座にも適用する。当初は任意だが、政府は21年をめどに義務化も検討するという。全口座にマイナンバーの登録を義務付け、国が個人の資産をより正確に把握することで、税の徴収漏れや生活保護の不正受給などを防ぐという。
 だが制度に対する国民の認知度は低い。内閣府の1月の調査で制度の内容を知っていたのは3割に満たない。情報漏えいなどの被害を心配する回答は6割を超えた。
 国民の理解が進まず、まだ運用も始まっていない中で、なし崩し的に利用拡大を目指すことには違和感を禁じ得ない。
 利用範囲が広がるほど情報流出や不正使用の危険性は増す。政府による個人監視の機能強化を危ぶむ声も上がるだろう。
 情報漏えいは確実に防げるのか。犯罪につけ込まれる隙はないのか。公平な徴税にどれほどの効果が見込まれるのか−。
 政府は制度のデメリットを含めた全体像や将来像についてもっと丁寧に説明責任を果たすべきだ。 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/161594

◆「マイナンバー法案」の概要/内閣府
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jouhouwg/hyoka/dai5/siryou1-1.pdf

◆視点・論点 「マイナンバーで何が変わるか」
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/213023.html