刑事裁判に市民が加わる裁判員制度が二十一日で施行十年になるのを前に、最高裁は十五日、この十年を総括した報告書を公表した。裁判員裁判の件数は一万二千件を超え、参加した裁判員は補充裁判員も含め約九万一千人。報告書は制度を「おおむね順調」とまとめたが、審理の長期化や辞退率の上昇などの課題も浮き彫りになった。
最高裁の大谷直人長官は同日の記者会見で、「公判審理が変化し、裁判員の視点・感覚を反映した多角的で深みのある判決が示されるようになった」と評価した。
最高裁によると、裁判員経験者は三月末現在で九万一千三百四十二人(速報値)。一万二千八十一件の裁判のうち97%が有罪判決となり、死刑が三十七件、無期懲役が二百三十三件、無罪は百四件だった。量刑面では性犯罪で厳罰化が進んだが、殺人や放火で執行猶予判決の割合が増えた。
一方、裁判員の候補者が辞退する割合は、制度が始まった二〇〇九年の53・1%から年々上昇し、速報値では68・4%に上った。事前に辞退しなかった候補者が、選任手続きのため裁判所に出向く出席率も、〇九年の83・9%から66・5%に減った。
総括報告書は、辞退率が上昇し出席率が低下している原因について、審理の長期化や国民の関心低下があると分析している。
<裁判員制度> 刑事裁判に市民の感覚を反映させる目的で、2009年5月21日に導入された。20歳以上の有権者から選ばれた市民が、プロの裁判官とともに殺人や強盗致傷など、最高刑が死刑または無期懲役か、故意に被害者を死亡させた事件の審理に加わる。裁判官3人と裁判員6人による審理が原則で、有罪・無罪と量刑を決める。
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