SNOWSCAPE MOERE Ⅲ

札幌のアートNPO「S−AIR」の柴田さんから、札幌郊外にあるイサム・ノグチ設計による「モエレ沼公園」で今月末より行われる「SNOWSCAPE MOERE Ⅲ」の案内が届きました。
「SNOWSCAPE MOERE」は冬のアート・プロジェクトをテーマに2005年から始まったもので、私は昨年夏にアサヒ・アート・フェスティバルの検証チームとして同公園を訪れ、この地ではじまっている動きを取材する機会に恵まれましたが、本当におもしろいことになっていて、公園がアート拠点として動き始めています。

以下、AAF検証委員会に提出した「SNOWSCAPE MOERE Ⅱ」のレポートを転載いたします。

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SNOW SCAPE MOERE Ⅱ

「地球を彫刻する」という自身の思いを実現する場として、最晩年84歳のイサム・ノグチが打ち込んだのがこの札幌市郊外に横たわる「モエレ沼公園」である。それは「次世代に引き継ぐべき緑の創出」を目指し、市街地を緑で包み込む「緑の環状グリーンベルト構想」を進めていた札幌市との幸福な出会いから生まれたもので、公園でありながら個人の彫刻作品という実にユニークな存在であるが、ここで始まった取り組みは、単にそれをうまく利用するというようなレベルのものではない。
「SNOW SCAPE MOERE」は、指定管理者制度の導入により、特色ある公園の魅力づくりを目指す中、北海道の冬の景観をいかしたアートフェスティバルとして、公園がグランド・オープンした2005年の冬から始まった。海外からアーティストを招聘しての企画や、市内のアマチュアおよびプロのバンドが出演するコンサートの他、「スノービレッジプロジェクト」と題された一連の企画——雪の屋台ともいうべきカフェ「スノーカフェ」や多くのボランティアとともに制作された「雪の洞窟プロジェクト」、大学の授業との連動企画やそこから生まれた学生と地域作家との共同作品の展示等が行われ、公園は、札幌やさらに広範囲にわたるエリアのアーティスト、学生、ボランティアなど、市民を巻き込んだアートの拠点として動き始めている。
特に注目したいのは、「公園でアートをやっている」ということに衝撃を受け、企画に参加したいとプランを持ち込む地域のアーティストたちが現れていることであり、次回「SNOW SCAPE Ⅲ」では、これらを積極的に受け入れ、ジャンルにこだわらずそれぞれが自主的にプロデュースする「場」を提供しようという方向で動いている。
アーティストが集まって来る公園。巨匠のつくった作品というそれだけでもユニークな存在に安住することなく、文化発信のプラットフォームとしての役割を担い始めたモエレ沼公園の取り組みは、新たな公園像の提案ともいうべきものであろう。

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門脇篤