ということで、今日は若き鉄道マニアWくんに昨年の「りくとうアートライン」の写真を見せ、主に展示場所として想定しているJR陸羽東線の無人駅の雰囲気を知ってもらいました。
「ふーん」と写真をながめていたWくん、おもむろにムツゴロウのどうぶつノートのようなノートを取り出し、「ボクも考えてきたよ」と箇条書きになったアイデア企画を披露してくれました。
「まずね、駅を陸羽東線にする」
「は? 駅も陸羽東線だけど」
「そうじゃなくて、駅をあれみたいにする」(と、先週、私がつくった右の写真のキハ112を指差す)
「ああ、無人駅をあの陸羽東線の列車のデザインみたいにするんだね?」
「そうそう。先生、陸羽東線のデザインが気に入ってたでしょ」
そうなんです。Wくんが持ってきてくれたJRの列車のカタログの中では、陸羽東線がダントツにシンプルかつシャープで趣味のいいデザインでびっくりしたんです。そのデザインを駅のデザインにまで有効利用しようという、Wくん、さすがです!
「じゃ、さっそくイメージスケッチしてみよう」ということになり、黙々と描き始めましたが、Wくん、どうも立体風の描き方が苦手で、平面図か正面図しか描けません。いいんですが、ちょっとインパクトに欠ける。
そこで私がヘルプ。右図のようなものを描いてみました。
こういうあたりを私は「こどもアート・プロジェクト」として導入したいと思っています。どういうことかというと、どうも学校や何かのいわゆる「美術」や「図工」では、技術偏重的なところがあるような気がするのですが、一般にまだ神経系の未発達な子どもの頃はいわゆるうまい絵を描くのが難しい(逆に味のある絵は描けるわけです)ので、そういう技術は適材適所でおまかせして、自分のイメージを実現するための企画力を養う場があってもいいんじゃないかなぁと。つまり、アーティストを使って自分の「作品」や「世界」を作り上げていくようなアート・リテラシーのようなものを体験する機会をつくれないかと思います。
長野の小中学校で数年前から始まっている取り組み(こちら)がまさにそれで、中学生が「キッズ学芸員」となって、自分たちのやりたい企画を実現するためにアーティストを選び、企画を説明し、いっしょにつくっていく、というのをやっています。
私は、自分のところに来るこどもひとりひとりに、どういうことをやりたいかたずねながら、それがときに思いもよらぬところへと転がりながらも、何かおもしろいものに育っていったり、かたちにならずとも、いろいろなことを考えたり試したりしてひとつの時間を過ごした、という体験をいっしょにしたいと思っています。できれば私の関わっているプロジェクトなどに反映できれば、ひとに見てもらうこともでき、通常の発表会や展覧会のようなかたちとはちがう見られ方の体験ができるかもしれません。そうした、個人の営みとしての作品世界ではなく、いろいろな人とのかかわりの中でぐるりとできていくプロジェクトとしての営みをできたらいいなと思っています。
だいたい、Wくんとの企画の方向性は見えてきたので、あとは企画のネーミングや駅舎内部はどうするか、どの駅でどのくらいの期間、いつごろにやるかなど、いろいろ細かいことなどもつめていこうということになりました。
また、来週は私がこれまでにつくった企画書のサンプルを持ってきて、できればWくんに企画書のかたちにまとめ、駅長さんに提出できるようなかたちにしていこうということになりました。
「一度、駅も実際に見てみないと」とWくん。そうなんです、現場に身を置くことこそが大切なんです。
写真は、展示を想定しているJR陸羽東線の無人駅のひとつ、上野目駅。
(門脇篤)